映画「ワンダーウーマンとマーストン教授の秘密」あらすじ&キャストと原作者が本当に伝えたかったこと

皆さん、映画「ワンダーウーマン」はもうご覧になりましたか?

2020年には映画「ワンダー・ウーマン1984」の公開も予定されており、今やコミックスだけでなくTVシリーズでも女性ヒーローとして確固たる地位を築いているワンダーウーマン。

ですが、その原作者についてはあまり知られていません。

今回はワンダーウーマンの生みの親であり、偉大な発明と発見をした心理学者でもあったウィリアム・モールトン・マーストン氏が、どのようにしてこのキャラクターを生み出すに至ったのか。

彼とワンダーウーマンのモデルとなった二人の女性達による数奇な運命を描いた、映画「ワンダーウーマンとマーストン教授の秘密」についてご紹介します。

映画「ワンダーウーマンとマーストン教授の秘密」のあらすじ

舞台は1928年のアメリカ。マーストンと彼の妻エリザベスは、ハーバード・ラドクリフ大学で心理学の授業を受け持っていました。

マーストン夫妻はウソ発見器の開発に力を入れており、生徒たちの中から実験に協力してくれる助手を募集します。

応募してきたオリーブ・バーンに惹かれるマーストンでしたが、次第に妻エリザベスとオリーブの間にも特別な感情が芽生え始めます。

3人はお互いを愛し合い尊重し合う特別な関係を築きますが、それが大学側にばれ、マーストンは解雇されてしまいます。

ですがその直後オリーブの妊娠がわかった事により、3人は大学を去った後も共に生活する事を決め、郊外へと引越し「家庭」を築きます。

世間には「オリーブは未亡人である」と嘘をつき、4人の子供にも恵まれ、裕福とは言えないまでも幸せな生活を送ります。

ある日ニューヨークで見つけたランジェリーショップで、ボンテージ・ファッションの世界が自分の提唱するDISC理論を体現していると知ったマーストンは、これをキャラクター化する事で、自身の理論を世間一般に認知させる事を思いつきます。

早速キャラクターとストーリーの原案を考え、ナショナル・ペリオディカル出版(現在のDC)へと持ち込んだマーストンは、編集長のマックス・ゲインズにタイトルを「ワンダーウーマン」にする事を勧められ、出版にこぎ着けます。

「ワンダーウーマン」は空前の大ヒットとなりマーストン家は一気に裕福になりますが、ある日隣人のマリーに3人の関係を目撃されてしまい・・・。

映画「ワンダーウーマンとマーストン教授の秘密」の登場人物

ウィリアム・モールトン・マーストン

心理学者であり、ハーバード・ラドクリフ大学で心理学の講義を行っています。第一次大戦中は諜報機関でスパイの尋問を行っており、その経験が心理学者としての下地になっています。妻のエリザベスと共に自らが提唱するDISC理論の研究とウソ発見器の発明に力を注いでおり、研究助手としてオリーブを起用します。妻のエリザベスとオリーブの両方を愛し、3人で関係を築きますがその事が大学にばれ教授職を解雇されます。フェティシュの世界と出会い、コミックを通して自分のDISC理論を提唱するべく「ワンダーウーマン」を生み出し大ヒットさせると同時に、世間の批判や検閲と戦います。4人の子供の父親であり、世間に理解されない関係だと分かっていても、懸命に家族を守ろうとします。末期の肺癌に侵されており、自分が死んだ後のエリザベスとオリーブを心配し関係修復に努めます。

エリザベス・マーストン

マーストンの妻で、夫と共にウソ発見器の開発に打ち込んでいます。ボストン大学の法科大学院を卒業した当時の女性としては最高の知識人ですが、ハーバードが女性である自分に心理学の博士号を与えない事に不満を感じています。煙草と酒を愛し、自立心が強く先進的な性格です。マーストンとは幼馴染で、互いに学問で触発し合い、また深く愛し合っています。当初は夫がオリーブと親しくなるのを警戒していましたが、次第に自身もオリーブに惹かれ始め、2人の人間を同時に愛する関係を受け入れます。マーストンが大学を解雇されてからは弁護士秘書として働き一家を支えます。一男一女(ピーターとオリーブ・アン)の子供にも恵まれますが、世間の好奇の目から子供達を守るためオリーブに「別居」を言い渡します。

オリーブ・バーン

ハーバード・ラドクリフ校で学ぶ女子大生です。美しく常に周囲の男性の目を惹きつけますが、自身はそれに戸惑っており、人間関係を学ぶためマーストン夫妻の助手に立候補します。女性解放運動家の母と伯母を持ちますが、自身は幼い頃から修道院で育てられたため、どちらかと言うと内向的な性格です。マーストンとエリザベスの両方に惹かれ、2人を同時に愛します。ジャーナリストを志しており、マーストンが大学を解雇されてからも子育ての傍ら執筆を続けます。バーンとドンという2人の男の子に恵まれます。

ジョゼット・フランク

児童学習協会の理事長で、教育界や子供を持つ親たちから絶大な信頼を得ています。「ワンダーウーマン」の内容が不適切であるとし、ナショナル・コミック社(現在のDC)に赴き、マーストンに審問を行います。物語は彼女からの質疑を受けて、マーストンが当時を回想するという形で進みます。

ブラント・グレゴリー

ハーバードの学生であり、オリーブの婚約者です。オリーブに紹介され最初はマーストン夫妻と親しくしますが、次第にオリーブが二人の影響で変化していくのを見抜き、夫妻とオリーブの関係が学校中の噂になったことでオリーブを問い詰めます。

マックス・ゲインズ

ナショナル・ペリオディカル出版(現在のDC)の編集長であり、スーパーマンを大ヒットさせた功労者でもあります。「女性ヒーローは売れない」と最初はマーストンの話を話半分に聞いていましたが、マーストンの持ってきた原案を見て、「タイトルを短くして『ワンダーウーマン』にしよう」とアドバイスし出版を決めます。コミック出版社に入る前は、学校の校長をしていました。

チャールズ・ギュエット

フェティッシュ嗜好の世界をアメリカに広めたパイオニアで、「Gストリングの帝王」と呼ばれています。ボンテージ・ファッションやハイヒール、緊縛などの道具を売るランジェリーショップをニューヨークのグリニッジビレッジで経営しており、その世界を広めるべく実演も行っています。彼がオリーブに着せた衣装や小道具の縄が、ワンダーウーマンの原型となります。

映画「ワンダーウーマンとマーストン教授の秘密」の用語解説

ハーバード・ラドクリフ大学

1879年に創設された名門女子大学です。マサチューセッツ州コロンビアに位置し、ハーバード大学の女性専門教育機関として設立されました。ハーバードとは教員やカリキュラムが共有されていましたが、大学がまだまだ男性優位のものであった物語当時は、あくまでも姉妹校という扱いでした。現在はハーバード大学と合併しており、伝統的に名前の残っている「ハーバード・ラドクリフ演劇クラブ」などでかつての名残を見ることができます。

DISC理論

マーストン教授が提唱した、支配(DOMINANCE)、誘因(Inducement)、服従(Submission)、承諾(Compliance)の4つからなる人間の行動理論です。マーストン教授はこれらが相互作用することで人間関係が築かれると考え、この説を「ワンダーウーマン」で分かりやすく表現しようとしました。なおDISC理論は現在は若干形を変え、自己分析ツールとして人材育成のために世界中のビジネスマンに利用されています。

ウソ発見器

第一次大戦中に諜報部員として人間の心理に興味を持ったマーストンは、終戦後ウソ発見器の開発に注力します。マーストン夫妻とオリーブは、人間が嘘をつくときに血圧が上昇するのを発見し試作機を完成させますが、特許を取得しなかったため後にキーラ―社が発売し莫大な利益を得ます。また、このウソ発見器はマーストンとエリザベスとオリーブがそれぞれの心情をさらけだす小道具としても使われています。

社交クラブ

北米の大学に存在する社交団体の一種で、男性クラブはフラタニティ、女性クラブはソロリティと呼ばれ、それぞれがラテン語の「兄弟」及び「姉妹」を表す言葉が語源となっています。各大学で古くから運営されている社交クラブに入会する事は一種のステータスとなっており、そこで培った人間関係は卒業後も維持される事が多いようです。クラブには入会の儀式が存在し基本的に内容は秘匿されていますが、その様式は多くの場合フリーメーソンから派生しています。入会者は同じ宿舎に寝泊りし、会員同士の結束を固めるため様々な規則が設けられており、違反者には罰則が科せられるなどします。

女性解放運動

フェミニズム運動とも呼ばれ、主に女性が受ける様々な性差別を是正していこうという動きを指します。1920年にアメリカで女性の参政権が認められ、第一次世界大戦中に人手不足から女性が工場などで働きはじめると、この運動は一気に盛り上がりを見せます。オリーブは女性解放運動において産児制限を推奨したことで有名だったエセル・バーンの娘であり、同じく女性解放運動家だったマーガレット・サンガーを伯母に持っています。

サッフォーの受難

古代ギリシャに存在した女性詩人です。サッフォーは出身地のレスボス島に学校を作り、自分が選んだ乙女たちをそこに集め教育を施していました。彼女たちに読んだ愛の詩も残されている事から、サッフォーは女性同士の同性愛と結び付けて考えられる事が多く、英語で「レスボス人」を指す”lesbian”がそのまま「レズビアン」の語源になったとされています。サッフォーの詩の才能を認めたプラトンは彼女を「芸術の女神」と称え、古代ローマでも高い評価を得ていましたが、後世になりキリスト教が伝播してくると、サッフォーの詩は同性愛的であるとして非難され多くの作品が失われました。

映画「ワンダーウーマンとマーストン教授の秘密」に隠された意味

真実の投げ縄

オリーブがギュエットの店で持たされた縄は、本来は緊縛のために用意されていた物でした。ですが「ワンダーウーマン」の設定では縄は相手の自由を奪うと同時に、真実を曝け出す能力を持っています。またこれは「ウソ発見器」を発明した3人が、世間の目を欺くために「嘘」を付き続ける事を選んだアイロニーとなっています。

銀の腕輪

ワンダーウーマンは常にどんな攻撃をも弾き返す銀の腕輪を身につけています。オリーブは登場時から両腕に銀の腕輪を付けており、これがワンダーウーマンの衣装にも取り入れられています。

ギリシャ衣装と軍服と毛皮のコート

劇中でマーストン夫妻とオリーブが初めて関係を持つシーンでは、演劇に使う舞台衣装を装着します。この時オリーブはギリシャ風の衣装を身に纏い、マーストンはアメリカの軍服を着ますが、これは後に創作されるアマゾン族のダイアナと軍人のトレバー大佐を示唆しています。また、エリザベスの纏っていた豹柄のコートは、ワンダーウーマンに登場する敵の一人、チーターを表しています。

映画「ワンダーウーマンとマーストン教授の秘密」の感想

私がこの映画を見て思い出したのは、森薫さんのマンガ「乙嫁物語」に出てくるアニスとシーリーンです。

このマンガではアニスが姉妹妻となったシーリーンの窮状を救うため、夫に頼んで彼女を第二夫人に迎えてもらいますが、アニスとシーリーン、夫とアニス、夫とシーリーンの間に三者三様の愛が描かれており、それと関係性が似ていると思ったのです。

この映画では最初にオリーブに惹かれたのはマーストン教授ですが、オリーブはまずエリザベスに惹かれ、それとほぼ時を同じくして夫人のエリザベスもオリーブに惹かれていきます。

アメリカと言えば、男性だけでなく女性もみな自立心があり、同性愛などのマイノリティにも寛容なイメージがあります。

ですが劇中の1920~40年代は、女性解放運動が沸き起こっていた時代です。

まだまだ女性の地位は低く弱い存在であり、一部で「女性の自立」が叫ばれつつも、エリザベスのように実力があっても現状に不満を感じている人も多かったはずです。

劇中でマーストンは、「強い女性を尊敬する男の子が育つはずだ」と言っていますが、当時は女性が強くなる事に違和感を覚える人が多かったという事でしょう。

ちなみにマーストン教授を演じた俳優ルーク・エヴァンズは、私生活ではゲイであることを公表しており、「それが俳優としての人生に支障が出たことはない」とも語っています。

劇中ではワンダーウーマンのキャラクターだけでなく同性愛の描写についても問題視されていましたが、それらを1940年代に描いた事がいかに画期的であったことか。

現在も男女の性差別だけでなく、性的マイノリティへの差別についてもまだまだ課題は残されていますが、それでも劇中の時代に比べれば確実に進歩していると言えます。

マーストン、エリザベス、オリーブそれぞれが持つお互いへの愛と、またマーストンが二人の女性を尊敬する心が、「ワンダーウーマン」という作品を通し長い年月をかけて、他者に対する寛容な姿勢を人々に浸透させていったのではないでしょうか。

コメント