映画「コンスタンティン」に登場する大天使ガブリエル。
主人公コンスタンティンと同じく人気のキャラクターですが、彼(彼女?)が原作で堕天してしまった本当の理由をご存知でしょうか?
実はガブリエルは設定改変が大きい映画版コンスタンティンよりも、さらに原作版とのギャップが激しいキャラクターなのです。
今回はそんなガブリエルを、映画版と原作版とで比較してみたいと思います。
映画版ガブリエルは雌雄同体?どこまでも純粋で邪悪な信仰心
映画「コンスタンティン」で女優ティルダ・スウィントンが演じていたガブリエルは、性別を持たない存在として描かれています。
180センチの長身で中性的な容姿のティルダが演じるガブリエルは、まさに神話に登場する天使といった感じで、スーツ姿も格好良かったですね。
映画では神への信仰心ゆえに人間の有り様を嘆き、人間がより神の恩寵に相応しい存在となるよう、神に代わり自ら人間に試練を課そうとします。
そのためには手段を選ばず、地獄の王であるルシファーの息子マモンに加勢し、神の子の一人であるアンジェラをも利用します。
私欲ではなく、どこまでも神のためを思っての行動ですが、結果的にその行為が神の逆鱗に触れガブリエルは羽を奪われ堕天してしまいます。
もっとも劇中の設定ではガブリエルはあくまでもハーフブリードであり、正確には天使ではないので堕天という表現は適さないのかもしれませんが、神に見捨てられ二度と天国に関わる事が出来なくなってしまったのは事実です。
それでもなお神への忠誠は失わず堕天を「愛の鞭」と言ったり、コンスタンティンが自分を殺さず殴るだけに止めたことを「成長」と喜ぶなど、「苦しみこそが人間の品性を高める」という自身の考えが間違っていなかった事を確信しています。
映画版ガブリエルは、どこまでも自らの信じる「狂信」により動いているのです。
ちなみに小説版ではマモンに殺されたチャズがハーフブリードとなり、ガブリエルの後任に収まっています。
原作版ガブリエルは実は男性!彼がかかった罠とは?
一方、原作版のガブリエルは、映画版とはかなり容姿・性格ともに異なったキャラクターです。
女性と見間違う中性的な映画版とは違い、あくまでも「スマートな出で立ちの男性」として描かれており、見た目だけで言えば天使版バルサザールといったところでしょう。
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原作コミックの「Hellblazer」は、DCの出版するコミック雑誌「Vertigo」で1988年より連載が開始され、何度か作者を変えながらも現在まで続いているロングランヒット作品です。
2013年にはシリーズを一旦終了しタイトルを「Constantine」とあらため、2016年に再び「The Hellblazer」としてリバースされています。
この中でガブリエルは、神の意思を代行するものとしてこれまで様々な場面で人間の歴史に関わってきたと描かれています。
ですが人間を守護する天使であるにも関わらず、人間への共感は薄くあくまでも人間を「人類という種」としか見ていません。
これがガブリエルの堕天の原因となるのです。
ある日、ガブリエルは街でジュリーという女性と出会います。
きっかけは些細な事でしたが、一緒に話をするうちにガブリエルはどんどんジュリーに惹かれていきます。
ジュリーの輝く目に、笑顔に夢中になり、彼女を喜ばせたくて桜の木を満開にさせたりもします。
とうとうジュリーと関係を持ったガブリエルは、初めて体験する快楽に酔いしれますが、突如ジュリーはガブリエルの胸を引き裂き、その心臓を引き抜きます。
ジュリーの正体は、サキュバスであるエリーでした。
映画版にも一瞬だけ登場したエリーは、原作版ではコンスタンティンの仲間の一人として描かれています。(コンスタンティンの40歳の誕生日を他の友人達とサプライズで祝ったりとかなり仲良しです)
サキュバスであるエリーは以前、タリという天使と恋に落ち子供を出産しますが、タリは天使達によって消滅させられ、子供も奪われてしまいます。
エリーはその復讐としてコンスタンティンと協力し、ガブリエルに自分たちと同じ思いをさせてやろうとしたのでした。
ガブリエルは神に助けを求めますが、神はガブリエルを汚れた存在として地球に叩き落とします。
神に拒絶され力も奪われたガブリエルはボロボロになり、墓地でエリーとコンスタンティンに過去の罪を詰め寄られます。
コンスタンティンはガブリエルを利用するため彼の心臓を人質にとり、人間に見せかけるためガブリエルの残った羽をチェーンソーで切り落とします。
何もかも失ったガブリエルは、人間の浮浪者として街角で身を踞せるのでした。
原作版ガブリエル堕天の原因となった事件と、コンスタンティンに訪れた結末
では何故、コンスタンティンはガブリエルを陥れようとしたのでしょうか?
実は単にエリーの復讐に手を貸したのではなく、彼自身もガブリエルに恨みがあったのです。
映画版と同じく原作版でもコンスタンティンは、30代後半に肺癌に侵されます。
余命幾ばくもない自分を助けてくれるようガブリエルに頼みますが、ガブリエルはこれを「自業自得だ」とつっぱねてしまいます。
ここまでは映画版と同じ流れですが、原作版コンスタンティンはそれでアッサリ引き下がるような人間ではありませんでした。
死んでも地獄には行きたくないコンスタンティンは、ここで一計を案じます。
コンスタンティンは死ぬ前に、自分の魂を地獄の有力な悪魔達に売りつけてしまいます。
彼の死後コンスタンティンと契約した悪魔達は、当然各々が魂の所有権を主張しますが、ここでやっと三重契約を結ばれていた事に気付きます。
地獄の実力者同士が魂を巡って全面戦争を起こすわけにもいかず、仕方なく悪魔たちはコンスタンティンを生き返らせ、天国側も事態収束のためコンスタンティンの癌を完治させる事にします。
天国と地獄を手玉に取ったコンスタンティンは、まんまと健康な状態で生き返ったのでした。
つまりガブリエルへの復讐劇は、コンスタンティンの癌が完治した後に行われているのです。
自分が死に瀕していた際にガブリエルから受けた仕打ちを、コンスタンティンはずっと根に持っていたのでしょう。
恐ろしい執念ですが、実はこの物語には続きがあります。
当時コンスタンティンにはキャシーという恋人がおり、コンスタンティンにしては珍しくかなり真剣に交際していました。
このキャシーを、コンスタンティンの敵の一人でありイギリスのファシストのリーダーであるチャーリー・パターソンが狙ったのです。
と言うのも、かねてよりパターソンは彼の活動に利用するため、ガブリエルを味方に引き入れようと目をつけており、彼に監視をつけていました。
監視役から、「ガブリエルがクリスチャンの女性と出会い、彼女に相当入れあげているらしい」との報告を受けたパターソンは、この事態の裏にコンスタンティンがいる事を直感します。
これを阻止するため、コンスタンティンのアキレス腱であるキャシーを確保しようとしたのですが失敗したため、コンスタンティンと彼の友人であるデズを拉致します。
二人は拘束され、拷問を受けたデズはコンスタンティンの見守る中、息を引き取ります。
コンスタンティンはパターソンに罠に落ちたガブリエルを引き渡すと嘘をつき解放されますが、兄が殺された事を知ったジョージにパターソンは殺されます。
コンスタンティンの起こした揉め事に兄が巻き込まれた事を知ったジョージは、「二度と俺にかまうんじゃねえ!」と言って去っていきます。
コンスタンティンは、貴重な友人2人を同時に失ったのです。
さらに事態が落ち着いた後、危険な目にあったキャシーは「これ以上あなたとは一緒にいられない」とコンスタンティンの元を去ってしまいます。
友人だけでなく最愛のキャシーをも失ったコンスタンティンは生きる希望を無くし、ガブリエルと同じく浮浪者になって街を彷徨うのでした。


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