キレイなジョーカーが意外な面白さ!「バットマン:ホワイトナイト」

2018年に発表された「バットマン:ホワイト・ナイト(原題:Batman White Knight)」というマンガをご存知でしょうか?

アメコミライター兼アーティストであるシーン・マーフィー(Sean Murphy)がストーリーと作画の両方を手がけた本作品は、その名のとおりバットマンの異名であるダークナイトから逆転し、ゴッサムシティのホワイトナイトとなったジョーカーが主人公です。

残念ながら現在のところ未翻訳ですが、2019年のアイズナー賞候補に選出されるなど、アメリカ本国では高い評価を受けています。

この記事では、そんなコミック「バットマン:ホワイト・ナイト」について解説します!

「バットマン:ホワイト・ナイト」のあらすじとキャラクター紹介

あらすじ

ジョーカーを追っていたバットマンは、精神薬工場でジョーカーを追い詰めます。いつもどおりの巫山戯た挑発を繰り返すジョーカーに激昂したバットマンは、ゴードン達の見守るなか、彼に無理やり効果の不明な精神薬を大量に飲ませます。瀕死の状態となったジョーカーはアーカム・アサイラムで奇跡的に回復しますが、意識が戻った時そこにいたのはジョーカーではなく、彼の別人格ジャック・ネイピアでした。彼は本当に「回復」したのか?それともこれはジョーカーの演技なのか?世間が揺れる中、退院した彼はある人物に会うべく、かつてアジトだった下町の潰れたおもちゃ屋に向かいます。

主な登場人物

ジャック・ネイピア(ジョーカー)

バットマンに無理やり謎の精神薬を飲まされたジョーカーは、彼の中に眠っていたジャック・ネイピアという別人格を目覚めさせます。ジャックはこれまでの行いを悔い、またジョーカーが凶行に走った理由はゴッサムを思うが故であり、真にゴッサムに恐怖をもたらしている存在はバットマンであると主張します。ジャックはもはやジョーカーではなくなった自分を受け入れてくれたハーリーン・クインゼル博士の力を借り、バットマンと正当な手段で決着をつけるべく行動を開始します。

ブルース・ウェイン (バットマン

アルフレッドの危篤により精神が不安定になっており、ジョーカーの挑発に激昂し彼に精神薬を無理やり投与します。ジョーカーがジャック・ネイピアとして生まれ変わったことに疑念を抱いており、またロビン(ジェイソン・トッド)の死や、これまでの軋轢からナイト・ウィング達との関係も悪化していきます。ついには警察の捜査活動を妨害したとして逮捕され、アーカム・アサイラムに入院させられてしまいます。

ハーリーン・クインゼル博士(ハーレイ・クイン)

バットマンへの強迫観念に縛られたジョーカーの目に自分が写っていない事に悩み、ついにはロビン(ジェイソン・トッド)の殺害事件が起こったことでジョーカーの元を離れていました。ジョーカーがジャック・ネイピアとなった事で今までとは違う関係を築くため、ジャックの右腕として、また精神科医として彼を助けるべく行動を共にします。髪型がこれまでのツインテールからショートカットになっており、常に眼鏡をかけています。

マリアン・ドルーズ(ネオ・ジョーカー)

元は銀行の窓口嬢でしたが、たまたま顔がハーリーン・クインゼルに似ていたため、銀行強盗に入ったジョーカーに「ハーレイ・クイン」として扱われます。ハーレイがジョーカーの元を去っている間、自分を「ハーレイ・クイン」として見るジョーカーに次第に感情移入していき、自らハーレイ・クインを演じるようになります。ですが後にジョーカーがジャック・ネイピアになった事で失望し、彼の元を離れます。やがて本来のジョーカーを取り戻すべく、マッド・ハッターを使い物語の裏で暗躍をはじめます。

Mr.フリーズ

病気の妻ノラを救うため、延命処置と病気治療の研究を続けてきました。戦前の親の代よりウェイン家から金銭的援助を受けており、アルフレッドの治療にも手を貸していました。物語終盤では彼の父親の発明が悪用され、街中が混乱状態に陥ります。また、フリーズ家とウェイン家が進めていた当時の計画についても明らかになります。

ジェームズ・ゴードン

ジョーカーの改心に疑念を持ちつつも、これまでゴッサム市警が法を無視し、正体の判らないバットマンに加担してきた事に疑問を持ち始めます。バットマンに代わる対策として、ジャックの提案する、最高の人材とバットマンの持つテクノロジーを合わせたGTO(ゴッサムテロ対策組織)の創設を受け入れます。

ディック・グレイソン(ナイト・ウィング)

バットマンのサイドキックであるロビンを務めていましたが、現在は決別しナイト・ウィングとして活動しています。バットマンのやり方に反発しているのは相変わらずで、ゴードンとジャックの呼びかけによりGTOに加入します。

バーバラ・ゴードン(バットガール)

本作では「キリング・ジョーク」事件が起こっていない設定なのか、元気にバットガールの活動を続けています。アルフレッドの死によりバットマンの良心の枷が外れる事を危惧し、無関係を貫こうとするディックに「バットマンからゴッサムを守れるのは自分たちしかいない」と叱咤します。ゴードンとジャックの呼びかけにより、GTOに加入します。

アルフレッド・ペニーワース

病の床で危篤状態となっていましたが、Mr.フリーズの技術でなんとか持ちこたえていました。ですが、重症を負って気を失ったブルースにその装置を譲り、静かに息を引き取ります。

デューク・トーマス

元スペシャルフォースで、現在は地元バックポートでギャング達を纏め、自警団組織を運営しています。「バックポートの人間が唯一、警察以上に嫌っているのがバットマンだ」と言い、ジャックとハーリーンの考えに賛同し、二人の活動を支援します。

マッド・ハッター

洗脳装置をジャックとハーリーンに奪われ、地下室に軟禁されていました。ネオ・ジョーカーにより発見され、以降は彼女と共に行動します。GCPDが隠していた情報にアクセスし、Mr.フリーズの生家であるフリーズ家がナチス党であった時代から、ウェイン家が支援を行っていた事実を突き止めます。ジャック達がゴッサム中の悪人達を操るために仕掛けたギミックを乗っ取り、GCPD達に対抗します。

バットマン:ホワイト・ナイト」バットマンが悪人に、ジョーカーが善人に!?

善悪逆転の世界はアース3(DCユニバースのマルチバースの一つ)で以前にもありましたが、今回は少し意味あいが違います。

アース3では世界そのものの常識が逆転していたために、結果的に善人が悪人に、悪人が善人になっていましたが、今回逆転するのはジョーカーの内面だけです。

ジョーカーは狂人であり通常の感覚では理解できない思考の持ち主ですが、この作品ではそんな彼が至ってまともになってしまいます。

反対にバットマンは、様々な状況が重なった事で世間から「悪」とみなされてしまい、徐々に周囲の仲間たちからも見放されていきます。

どんな悪事でも「ジョーク」の一つとして軽く行うジョーカーのイメージとは違い、「ジョーカーがジェイソン以外の人間を殺したことはない」とハーレイが証言するなど、従来のジョーカー像とは違った設定となっています。

ですが、ジョーカーが犯罪を犯す動機や、これまでゴッサムで起きた事件の裏で苦しむ人々に焦点が当てられるなど、非常に面白い解釈が綴られているのです。

例えば、悪人を退治する際バットマンはなるべく人の多い中心街を避け、人の少ない地域へと誘導してから戦います。

そのためジャックは、バットマンが街を救うたびに、その被害を被るのは多くがバックポート(通称:ブラックポート)と呼ばれる貧しい地区に住む人々である事実を訴えるのです。

その被害総額は、なんと年間約30億ドル!

しかも不動産を買うお金のある金持ち連中は、それを見越して安く土地を買い、バットマンが壊した地域の再開発に便乗して一儲けしています。

ジャックはバットマンのようなヴィジランテ(自警団員)ではなく、GCPD(ゴッサム市警察)が主導する正式な反犯罪組織による警備活動が必要であると主張し、主にバックポートの住人たちの支持を受け、評議員選に乗り出します。

一方のバットマンも、これまで自分が正義と信じて行ってきた活動が、結果的に貧しい人々を苦しめ、なおかつ富裕層の金儲けに利用されていた事実を知ってしまい、自身の行動に疑問を持ち始めます。

また長らくバットマンとジョーカーの遺恨であった、2代目ロビン(ジェイソン・トッド)の死についても真相が明らかになります。

とにかくストーリー展開が素晴らしく、アクションあり策謀ありと映画のようなハラハラ感を味わう事ができ、最後の最後に思わぬ真相が明らかになるなど、ラストまで息を付かせぬ展開が続きます!

ちなみに、「狂人ジョーカー」の人格が唐突に出現するので、そう言う意味でも読んでいてハラハラします(笑)

バットマン:ホワイト・ナイト」キレイなジョーカーとハーレイの愛の行方は?

以上のように、この本はジョーカーとハーレイのコンビ(いわゆるジョカハレ)がお好きな方には、非常にオススメな作品だと思います。

近年のバットマンはダークなストーリーが多く、特にジョーカーの狂気がこれでもかと言うくらいに強調されているので、まともな状態のジョーカーというのは却って新鮮でした。

ダークな作風も良いのですが、どちらかと言うとアニメシリーズ風のコミカルな作風が好きな自分としては、シリアスでもこれくらいの方が読みやすいですし、ハーレイfanとしても彼女が幸せになってくれるストーリーが読めるのは嬉しいです。

これまでハーレイ・クインが出演する作品を多数読んできた私ですが、正直こんなに幸せそうなハーレイ(あるいはジョーカーも)は見たことがありません(笑)

ただ、この物語では2人がそれぞれ「ジャックとハーリーン」として恋に落ちているので、正確には「ジョーカーとハーレイの物語」とは言えないという人もいるでしょう。

作中でネオ・ジョーカーはハーリーンに対し、「あなたが愛しているのは本当のジョーカーじゃない!」と言って軽蔑します。

一方ハーリーンは、「あんたはジョーカーの欠陥だけを愛してた!私はその欠陥ごと彼を愛してたの!」と言い放ちます。

それと同じく、ジョーカーがジャックとして覚醒してからは、ハーリーンはあくまでもジョーカーとしての過去を持つジャックという一人の男を愛したのだと思います。

そう考えると、ジャックはジョーカーとしての過去を、ハーリーンはハーレイ・クインとしての過去を乗り越えそれぞれ前に進もうとしているように見え、自分としてはとても納得のいく展開でした。

何故なら「THE NEW 52」以降、ハーレイはジョーカーと決別しヒーロー路線を歩んでいますが、それはあくまでも「ハーレイ・クイン」の延長線上だと思うからです。

本来の彼女は精神科医のハーリーン・クインゼル博士であり、ジョーカーのためにハーレイ・クインになったのであれば、彼と別れた後はハーレイ・クインを辞めてもいいはずです。

悪役からヒーローにジョブチェンジするにしても、「ハーレイ・クイン」を生み出したのがジョーカーである以上、「ハーレイ・クイン」を続ける限り永久に彼の影響下を抜け出せないのは当然なのですから。

ジョーカー自身も、本作品内では元はコメディアンを目指す至って普通の青年でした。

それがどうボタンを掛け違えたのか徐々に悪の道に染まっていき、ヒーローとしてのバットマンが登場したことで、彼との掛け合いを通し世間に自分を表現する事が辞められなくなってしまいます。

そう、まるで「ヒーローとヴィラン」を題材にしたお笑いコンビのように・・・。

またバットマンも自身のエゴにより周囲の人々を傷つけてきた罪を認め、バットファミリーとの絆を取り戻し、ゴッサムのために前に進もうと決意します。

邦訳版が未だに出ていないのが残念ですが、それを待たずとも一見の価値があるストーリーです。

絵もすごくスタイリッシュで日本人の目から見ても読みやすいので、「アメコミの絵が苦手・・・」という方でも違和感なく読めると思います。

是非、ジョーカーとハーレイ二人の結末を、その目で確かめてください!

「バットマン:ホワイトナイト」6月27日に翻訳版発売&続編始動!

現在まで未翻訳だった「バットマン:ホワイトナイト」ですが、2019年6月27日に待望の翻訳版がヴィレッジブックスより発売されます!

既にAmazonでは予約が始まっていますので、「バットマン:ホワイトナイト」が気になるという方は、要チェックです!

是非この機会に本作のストーリーをお楽しみください!

また、DCの発表によると「バットマン:ホワイトナイト」の正式な続編となる「BATMAN:Curse of the White Knight」が、同じく6月27日に公開されます。

ライター&アーティストは勿論、前作と同じくシーン・マーフィーで、前作同様ブラック・レーベルでの連載です。

公式発表によると、続編では新たにアズラエルというキャラクターが登場し、ウェイン家の秘密にさらに迫る内容とのことですが、あのラストから次回作へどう繋がっていくのか?

引き続きネオ・ジョーカーの出番はあるのかなど、今から続きが気になって仕方ありませんね!

また、こちらは未翻訳作品ですが、ほぼ同時期にアメリカで発売された「Harley Loves Joker」もおススメです!


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