ハーレイのジョーカー愛がさく裂!「ハーレイ ラヴス ジョーカー」

映画「スーサイド・スクワッド」では、ラブラブのバカップルぶりを見せつけたハーレイ・クインとジョーカー。

あまりにもハーレイに甘すぎるジョーカーに、原作ファンには少し違和感のあった2人でしたが、たまにはそんな二人も良いですよね!

旧アニメシリーズや原作コミックスなどでは、ハーレイの一途な愛に対して冷たい態度しかとらないジョーカーですが、そんな彼の意外な一面を見てみたくありませんか?

そんな珍しいジョーカーが見られる数少ない作品の中でも、特におススメなのが「ハーレイ ラヴス ジョーカー(原題:Harley Loves Joker)」です!

タイトルこそ「Harley Loves Joker(ハーレイはジョーカーが大好き)」ですが、この作品のジョーカーは、いつになくハーレイを(他作品に比べ)大事にしています。

2018年に発表された本作品は、ハーレイ・クインの生みの親であるポール・ディニが原作とあり、近年の殺伐とした雰囲気とは違うコミカルなストーリーが特徴です。

この記事では、まだハーレイ・クインがジョーカーの右腕として活躍していた頃の様子を描いた、未翻訳作品「ハーレイ ラヴス ジョーカー」についてご紹介します!

「ハーレイ ラヴス ジョーカー」のあらすじとキャラクター紹介

あらすじ

12月26日の夜、クリスマス商戦の売上金を狙っておもちゃ屋に忍び込んだジョーカーは、すでに何者かが金を盗み出していた事を知ります。その後も連日のように自分が襲うはずだった標的を横取りしていく犯人にいら立ちを募らせますが、ハーレイは健気にもそんなジョーカーを元気づけようとします。大晦日の夜、デートついでにデパートを襲った二人でしたが、ジョーカーがハーレイに贈ったコートが原因で足がついてしまい、バットマンにアジトを襲撃されます。アジトを捨て場末のモーテルを仮のアジトにした二人でしたが、狭い部屋でのペットや子分たちとの共同生活に嫌気がさしたハーレイは、潰れたおもちゃ屋を理想のアジトに改造する事を思いつきます。一方ジョーカーは謎の犯人をおびき寄せるため、ペンギンと手を組み罠を仕掛けようとしますが・・・?

主な登場人物

ハーレイ・クイン(ハーリーン・フランシス・クインゼル)

ジョーカーと共にゴッサムシティで犯罪を繰り返しています。ジョーカーのために理想のアジトを作ろうとしますが、ジェンナからの脅しにより、一週間以内に300万ドル(約3億円)の代金を支払わないとアジトを爆破すると脅されます。完璧なアジトに大喜びするジョーカーにその事を打ち明けられず、またグリソンの登場により自身の「右腕」としての立場が危うくなり、ジョーカーとの関係もギクシャクし出します。

ジョーカー

ハーレイと共にゴッサムシティで犯罪を繰り返しています。自分の計画を先回りして獲物を横取りするグリソンに最初は腹を立てますが、彼女の腕を見込み自身のギャングに招き入れます。自分のためにアジトを用立ててくれたハーレイをべた褒めしますが、グリソンが仲間になってからというものハーレイを邪険に扱い始めます。

本作のジョーカーは割と人間臭く描かれており、ハーレイの怪しい行動(アジト改造を秘密にしていたため)に浮気を疑ったり、機嫌の悪いハーレイに「話し合うか?」と聞いたりするなど気遣う場面も見られます。

また、後述しますが普段は秘めている彼の本心がポロリとこぼされたりもします。

グリソン(ガブリエル・マティアス)

ゴッサム中の金になりそうな場所で盗みを働き続けている怪盗です。実はハーレイとはゴッサム大学時代の同級生で、ともにS.T.A.R.ラボの動物研究所でアルバイトをしていました。ですが、Dr.ラングストームの論文に感銘を受け、より人間とDNAが適合しやすいフェレットを使い独自に研究を続けていました。そのため、動物研究所で育てているフェレットを実験に使って死なせていた事実を知ったハーレイにより、S.T.A.R.ラボを首になり大学からも追い出されます。ですがその後も研究を続け、自身とフェレットのDNAの融合に成功すると、「グリソン」と名乗りハーレイに復讐するためジョーカーに近づきます。

ちなみに、カーク・ラングストーム博士とはバットマンに登場する悪役(ヴィラン)の一人で、研究により自身と蝙蝠のDNAを融合させ、「マン・バット」に変身する人物です。

ジェンナ・ダフィ

ハーレイの友人の一人です。通称「カーペンター(大工)」と呼ばれており、その名の通り大工仕事の腕をハーレイに見込まれ、アジトの改造を任されます。ですが、法外な代金を請求し「一週間以内に払えなければ建物中に仕掛けた爆弾で完成したアジトを吹き飛ばす」と脅します。さらに、ハーレイが潰れたおもちゃ屋の正当な権利を持っていない事で彼女の弱みを握り、ハリエットやウォーラスなど他の仲間たちと共に恐喝します。

かなりマイナーな悪役(ヴィラン)ですが、本作品では主要人物の一人です。

ペンギン

ゴッサムシティの裏社会の大物です。ゴッサム中を荒らしまわるグリソンを捕まえるため、ジョーカーに協力します。自身の持つ「宝石でできた孔雀像」を囮(おとり)として提供しますが、まんまとグリソンに盗られてしまいます。

ウォーラス

かつてジェンナと共にマッドハッター率いる「ワンダーランド・ギャング」に所属し、バットマンと戦った悪役(ヴィラン)です。今回もジェンナの協力者として登場し、ハーレイ・クインを恐喝します。

ハリエット

ジェンナやウォーラスと同じく、かつて「ワンダーランド・ギャング」に所属していた悪役(ヴィラン)です。常にバニーガールのような衣装に身を包み、電撃を操ります。冒頭ではハーレイとも親しくしていましたが、最終的にはジェンナに味方し共に彼女を恐喝する側にまわります。

トゥウィードゥルダム&トゥウィードゥルディー

かつて「ワンダーランド・ギャング」に所属していた二人組の悪役(ヴィラン)です。そっくりな見た目をしていますが双子ではなく、従弟同士です。ジェンナたちと共にハーレイを恐喝します。

バットマン

ハーレイが脱ぎ捨てたコートからジョーカー達のアジトを見つけ出し襲撃しますが、ジョーカーがあらかじめ仕掛けておいた爆弾によりジョーカーとハーレイを取り逃します。

エリオット・マクスウェル&マーゴ・マクスウェル夫妻

下町の潰れたおもちゃ屋を買い取ったオーナーたちです。おもちゃ屋を潰し、新しくコーヒーショップをオープンしようとしていましたが、ハーレイ・クインにより「遠く」へ行かされます。投資に熱心であり、自宅には高価な絵画や置物を多数所有しています。

ハイエナたち

ジョーカーとハーレイのペットとして様々な作品に登場するハイエナです。二人(特にハーレイ)に懐いており、ハーレイも彼らを「ベイビーズ」と呼んで可愛がっています。本作品ではハーレイがS.T.A.R.ラボでアルバイトをしている時から、まだ小さい姿で登場しています。

「ハーレイ ラヴス ジョーカー」ジョーカーに尽くすハーレイの内面の葛藤

以上のように全体的にコメディタッチな本作品ですが、実はところどころにシリアスな展開も組み込まれています。

特に注目したいのが、夢の中でハーレイが会った「ある人物」との会話です。

夢の中でカウンセリングを受けるハーレイ・クイン。

グリソンが現れてからというものジョーカーとの関係が上手くいかない事、彼がグリソンばかりを贔屓し自分の意見には耳を傾けてくれない事を話します。

診察しているのは、かつてアーカム・アサイラムで精神科医として働いていた頃の自分(ハーリーン・クインゼル博士)です。

このハーリーンは、おそらくハーレイの持つ正気の部分(心の奥底で現状に疑問を持つもう一人の自分)と捉えるべきでしょう。

夢にはアルコール依存症らしいハーレイの母親まで登場しますが、彼女たちと対話するうちにやがてハーレイは決意を固めます。

ウェイン産業の施設を襲おうとしているジョーカーとグリソンの計画を頓挫させ、彼から離れるためにブルース邸に情報をリークするのです。

「やっと自分を取り戻したみたい!」と晴れ晴れとした気分になったハーレイは、このままアジトを後にしようとします。

それを両手で親指を立てながら、満面の笑顔で応援するハーリーン。

ですが、ジョーカーが置いていったメッセージボックスの内容を聞いて、今までの彼の言動が全てグリソンを陥れるための計画である事を知ったハーレイは、途端に自分が取った行動を後悔しはじめます。

それを見て、とうとうハーレイに愛想をつかしたハーリーンは、おもむろに着替え始めます。

お団子頭と眼鏡、そして白衣を脱ぎ捨て、金髪ツインテールにパンクジャケットを羽織り、もう一人の「ハーレイ・クイン」に変身するハーリーン・クインゼル。

これは勿論、別作品で同時期に連載されていた「ハーレイ・クイン」シリーズを意識した展開です。

「ジョーカーと別れ、自分自身の人生を切り開くハーレイ・クイン」となったハーレイは、呆然とするもう一人の自分に問いかけます。

「彼があなたに『愛してる』なんて、一度でも言ってくれた?」

そう聞かれたハーレイは、自分自身を納得させるかのようにこう答えます。

「言ってくれるわ。彼は私を愛してる。そんな事わざわざ言われなくたってわかってるし、いつかきっと言ってくれるはずよ」

必死にジョーカーに出会う前の、本来の自分に戻ろうと説得するもう一人のハーレイに対し、頑なに現在の希望にしがみつくハーレイ。

説得を諦めたもう一人のハーレイは、最後にこう言って消えます。

「さようなら、ハーレイ。あなたが大人になった時にまた会いましょう」

「ハーレイ ラヴス ジョーカー」ジョーカーにとってハーレイの存在とは?

では結局のところ、ジョーカーにとってハーレイとはどのような存在なのでしょうか?

本作品内でも、ジョーカーは一見ロマンチックな言葉をハーレイに囁きつつも、結局は利己的な行動しか取っていません。

一途な愛ゆえに盲目的になっているハーレイは一見それらをすべてプラス思考に捉えていますが、上述したように心の奥底ではジョーカーの言動に疑問を抱いています。

ですが仮のアジトに落ち着いた最初の夜、ジョーカーは隣にいるハーレイに世間に対する鬱憤をぶちまけ、こう言います。

「まったく、歪みきって馬鹿げた世の中さ。俺たちのような才能のある者を、やれ狂人だのサイコパスだのと。まるで惨めで頭がおかしいみたいに嘲笑され続けて、もう何年も俺は一人だった。だが、お前に出会った。(中略)正直、俺の人生にお前みたいな存在が現れるなんて考えてもみなかったよ、ハーリーン・クインゼル。もう二度と言える勇気が出ないかもしれないから言うが、俺は本当にお前のことを・・・」

「Harley Loves Joker」(私訳)

上記にあった、ハーレイの内面(ハーリーン・クインゼル博士)が投げかけた疑問に対する答えがここにありました。

残念ながら、この言葉をハーレイは疲労で寝てしまっていて聞く事が出来ませんでした。

それに気づいたジョーカーは、ハーレイにそっと毛布をかけてあげます。

これを純粋に『愛』と取るかは、人それぞれだと思います。

ジョーカーは最後に何と言おうとしたのか?

そもそもこの語り自体が、単にハーレイを操るために出したいつものジョークなのかもしれませんし、そうではないのかもしれません。

ただ、私は別の捉え方をしました。

ジョーカーにとって、ハーレイが特別な存在である事は間違いないと思います。

なのできっと、これはジョーカーの本心だったのでしょう。

ジョーカーとハーレイはよく似ています。

バットマンとジョーカーがコインの裏表なら、ジョーカーとハーレイはどちらも裏面しかないコインと言えます。

何故両方が裏なのかと言えば、「ハーレイ・クイン」とはジョーカーが作り出した彼自身の現身(うつしみ)だからです。

ハーレイは作品内でも度々「女版ジョーカー」と言われていますが、彼女はジョーカーと同じくらい狂っていて、ジョーカーだけを盲目的に愛し、何よりジョーカーの持つ世界観を理解できる、ジョーカー以外の存在です。

バットマン曰く「自分しか愛さない」ジョーカーが唯一愛する事が出来るとすれば、それは自分以外の自分(ジョーカー)しか居ないのでしょう。

ですが自分以外という事は、「いざとなれば切り捨てることが出来る」という事です。

アニメや原作でもジョーカーは、よくハーレイを囮(おとり)にしたり作戦のために見捨てたりします。

特に印象的だったのが、「The Clown at Midnight(真夜中の道化師)」というストーリーで、人格の崩壊が極限まで進んだジョーカーがハーレイを殺害しようとするシーンです。

これを止めに入ったバットマンは、現実を受け入れられないハーレイにこう言います。

「ハーレイ、狙いは君だ。私じゃない。その男は君を大切にしていた。君を殺すことで、自分が人間以上の存在であることを示そうとしているんだ。」

「The Clown at Midnight」 (「BATMAN AND SON」収録)

ポール・ディニの作品はコミカルな作風が多いため、流石のジョーカーも「The Clown at Midnight」ほどMADではありませんし、ハーレイとの関係も(生みの親としての親心ゆえか)ロマンチックに描かれています。

よって、数あるジョーカー像のなかでも本作品では比較的優しい部類に入るジョーカーですが、冒頭の台詞は果たして彼の持つ数少ない正気の一部だったのか?

マルチバースという概念を持つDC作品において、別作品と比べるのはあまり宜しくないかもしれませんが、ジョーカーと言うキャラクターの根本的性格を考えれば、あまり楽観はできないでしょう。

「ハーレイ ラヴス ジョーカー」まとめ

大御所ポール・ディニが原作とあり、旧アニメシリーズの雰囲気を踏襲しつつも近年のハーレイ像もきちんと組み込まれている素晴らしい作品でした。

近年はリアル志向が強いため絵が写実的だったり、あるいはキャラクターの内面をかなりグロテスクに掘り下げたストーリーが多いですが、本作品はジョーカーたちの車がジョーカーの顔のデザインだったり、良い意味でマンガっぽく仕上がっています。

絵もアニメ風で話もテンポよく進むので、129ページを一気に読めてしまいます。

ですがオリジナルキャラクターのグリソンはともかく、ジェンナやハリエットなどのマイナーキャラクターが多く起用されている点はかなりマイナー向けかもしれません。

(ただし彼らのバックストーリーを知らなくても問題なく読めます)

ちなみに、本作品のオマージュとして実は「Joker Loves Harley」というストーリーも存在します。

こちらはDC REBIRTH版「Harley Quinn」シリーズの中のストーリーで、改心したジョーカーがハーレイの前に姿を現し、二人の未来を真剣に考えようとします。

ですが、一見ハーレイの理想通りに見えるそのジョーカーは実は・・・?

ジョーカーの変貌に心揺れるハーレイと、ハーレイに思いを寄せるレッドツールというキャラクターとの三角関係など、なかなか面白いストーリーでこちらもおススメです。

ところで上記の作品に始まり、近年はハーレイ・クインと言えば金髪ツインテールのヒーロー路線が主流でした。

ですが、2019年10月から放映開始予定の単独アニメでは悪役寄りのハーレイ・クインが主人公だったり、今年に入ってDCが新たにゴッサム時代のハーレイ・クインの作品スタートを告知するなど、原点回帰の様子を見せています。

この「ハーレイ ラヴス ジョーカー」もその方向性の一端だと考えられますので、私としては是非ともジョーカー&ハーレイ・クインの悪役コンビの活躍をもっと制作して欲しいですね!

残念ながら、「ハーレイ ラヴス ジョーカー」は現在(2019年7月時点)は未翻訳であり、翻訳版発売の情報も入ってきていません。

ですが、全体的にコメディタッチで描かれていますし、内容自体もわかりやすいのでジョカハレ好きな方には是非とも読んでいただきたい作品です。

以前ご紹介した、ゴッサムの正義の騎士へと変貌を遂げたジョーカーとハーレイのラブストーリー、「バットマン:ホワイト・ナイト」は「ハーレイ ラヴス ジョーカー」とほぼ同時期に発売されましたが、先日とうとう翻訳版が発売されました。

ですのでこちらも是非、小学館プロダクションもしくはヴィレッジ・ブックスから、翻訳版が発売される事を期待したいですね!