3人のハーレイ・クイン、新設定でジョーカーとの関係はどう変わる?

映画「スーサイド・スクワッド」に出演したことで、日本でも一躍人気ヒーローの仲間入りを果たしたハーレイ・クイン

もともとはジョーカーのオマケ程度の扱いだった彼女も、いまや本命ジョーカーを凌ぐほどの勢いを見せています。

そんなハーレイ・クインを主人公にしたシリーズがこの秋に新たに登場します。

しかも1作品ではなく、なんと一気に3作品も登場するのです!

既にそのうちの一つである「Harley Quinn: Breaking Glass」は、2019年9月3日にコミックスが発売されています。

この記事では新たにスタートするハーレイ・クインの3つの物語について、それぞれの内容について解説していきます!

10代のハーレイが大暴れ!「Harley Quinn: Breaking Glass」


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「ハーレイ・クイン:ブレイキング・グラス」あらすじ

15歳の少女ハーリーン・クインゼルは、シングルマザーの母親が遠方の仕事に行く間、ゴッサムシティの祖母の家に行くことになる。だが祖母はすでに亡くなっており、代わりに同じビルに住んでいたMAMAと呼ばれるドラッグクイーンのところでお世話になることに。変わり者の従業員たちや、ゴッサム高校でできた親友アイビーと共に楽しく暮らしていたが、ケイン家が経営する大企業ミレニアム・エンタープライズにより、地域再開発のためMAMAの店は立ち退きを要求される。

ケイン家の横暴に対しアイビーとその両親は、古くからこの地域に住む住人達の先頭に立ち断固抗議の構えを見せる。一方MAMAの店には嫌がらせでレンガが投げ込まれ、そこには犯人が残していったケイン・コーヒーの紙コップが落ちていた。割られた窓ガラスを前に報復を決意するハーリーンだったが、そんな彼女の前に突如謎の人物が現れる。ジョーカーと名乗った少年は、「一緒にミレニアム・エンタープライズをぶっ潰そう!」と持ち掛けるが・・・。

この「ブレイキング・グラス」は、ゴッサム・ハイ(ゴッサム高校)を中心とした、まったく新しい世界観です。

ティーンエイジャー向けに作成されたこのシリーズは、おなじみのキャラクター達が全員高校生(!)という設定で、ハーレイがゴッサムに引っ越してくるところから始まります。

本作のハーレイは父親を早くに亡くしずっと母親と二人で暮らしていましたが、昔から自分の納得できない事には必ず反抗し、報復するというポリシーの持ち主。

かといって悪人という訳ではなく、むしろ正義感が強く多感な少女ゆえに、権力によって弱者が虐げられることに我慢がならないという感じです。

一方お約束のように親友となるアイビーも、優等生ではないけれど頭が良く自分の意見を持つしっかりした少女として描かかれており、変わり者同士ハーリーンともすぐに仲良くなります。

(トレードマークの赤い髪がパーマの強い黒髪になっており、移民系の印象を受けます)

そして不思議なマスクで顔を隠した正体不明のジョーカーは、一見ハーレイと同じ目的で行動するかに見えますが、最後に意外な真実が明らかに!

ちなみにバットマンことブルース・ウェインもちらほら意味ありげに登場しており、最後には続編となる「Batman: Nightwalker」に続くストーリーが挿入されています。

ティーンエイジャー向けなので残酷な犯罪描写などもなく、どちらかと言うと10代の女の子が主人公のホームドラマみたいな感じで、世間の不条理に直面したハーレイ少女の内面の葛藤に重点が置かれています。

まったく新しいキャラクター設定やハーレイとジョーカーの関係性は、古参ファンには賛否両論あるかもしれませんが、私はとても楽しめました!

ヒーロー達が高校生になっているという設定は、アニメ「スーパーヒーローガールズ」で既に慣れてしまっていますが、あのシリーズにはバットマンやジョーカーが出演しないので、これはこれで新鮮です(笑)

今後どのように話が続くのか、期待して追っていきたいと思います!

余談ですが、原作者のマリコ・タマキさんは、思いっきり日本名ですがカナダ人です。

主にティーン向けの小説などを書いている作家で、アメコミ系では過去に「スーパーガール」や「シー・ハルク(ハルクの女性版)」などの作品を手掛けており、従妹のジリアン・タマキとの共著「This One Summer」で2015年にアイズナー賞を受賞しています。

医師と患者のダークロマンス、新解釈「HARLEEN」

「HARLEEN(ハーリーン)」あらすじ

狂人のための革新的な治療法を発見したハーリーン・クインゼル博士。彼女はアーカム・アサイラムとGCPDのホールを行き来する犯罪者と社会病質者たちを使い、その治療法の有効性を実証しようとしていた。ゴッサム市民の間で高まる、犯罪への無関心を終わらせるために・・・。だが、触法精神障碍者を守る刑事司法に、実験を阻まれてしまう。

そんな折、恐ろしい犯罪者ジョーカーによる都市への攻撃が起こり、ハーリーンは治療対象の一人として考えていたジョーカーと直接顔を合わせることになる。だがジョーカーと対峙するうち、ハーリーンはジョーカーを悩ませる狂気の世界へと引き込まれていく。

これまでハーリーン・クインゼル博士の人物像についてはいくつかの解釈が創られてきました。

一つは学生時代はあまり優秀ではなかったものの、あらゆる手管で教授陣を篭絡し高評価を勝ち取って卒業後、アーカム・アサイラムに就職したというもの。

または高校時代から成績優秀で、苦境から抜け出すために大学で精神医学を学んだというもの等々いくつかバリエーションがありますが、そのどれもに共通するのは彼女が野心家であるということです。

そもそもがジョーカーとの出会いからして、当初ハーリーンは研究対象として彼を見ており、いずれは彼との診療を本に書いて出版しようと目論んでいました。

そんなどこか利己的な人物とされてきた従来のハーリーン像とは違い、本作品の彼女はかなり良心的な人物として描かれるようです。

何故なら発表されているあらすじを読む限り、本作品のハーリーンはジョーカーを始めアーカム・アサイラムの患者たちを本気で治療しようとしているようだからです。

これまでハーレイとジョーカーの物語といえば、アーカーム・アサイラムを出てからの話が多かったのですが、この作品ではそれ以前の精神科医と患者としての二人にフォーカスされるようですね。

よくハーレイの人物紹介に書かれている、「患者であるジョーカーと接するうちに、彼の狂気に呑まれていった」の部分が、かなり深く掘り下げられていくと思われます。

ちなみに、私がこの発表を最初に見て驚いたのがアーティストの絵柄です。

DCの公式ページでイメージが見られますので是非チェックして欲しいのですが、インパクトのある表紙とは違い、中の絵はかなり綺麗系・・・。

これが彼女の心象風景としてだからなのかどうかは分かりませんが、なんかジョーカーも線が細い感じがします。

Nico
Nico

ちょっと少女漫画っぽい!?

そうは言っても発表されるのはブラック・レーベルなので、話自体はかなりダークな感じになると思われます。

とにかく発表されるのが今から楽しみです!

「HARLEEN」は、2019年9月25日から2020年春まで毎月連載の予定です。

2人の新たなる出会いとサスペンス「Joker/Harley: Criminal Sanity」

「ジョーカー/ハーレイ:クリミナル・サニティ」あらすじ

日々暴力的な事件が発生し続けるゴッサムシティ。GCPD(ゴッサム市警察)は、若き法医学精神科医でありプロファイラーでもあるハーレイ・クインに、とある難事件について協力を求める。ある日ハーレイは、ルームメイトの惨殺死体を発見するが、そこには悪名高い連続殺人犯の署名が残されていた。

ーーその名はジョーカー!

街中に現れる凄惨な殺人のディスプレイ。交錯する過去と現在。犯人を探し出すことに執着するにつれ、どんどん深みにはまっていくハーレイ・クイン。事件解決のため、彼女はどこまで進むべきなのか?そして、越えてはいけないラインとはどこなのか・・・。

ブラック・レーベルで発表される本作品は全9話で構成される限定シリーズで、ハーレイとジョーカーの出会いの物語です。

精神科医もしくはプロファイラーが事件解決のために警察に協力するというコンセプトは、テレビドラマなどでよく見られる設定ですよね。

正義と悪、追うものと追われるもので男女とか、まるで「羊たちの沈黙」みたい!!

これまではジョーカーを捕まえるのはバットマンの役目でしたが、この作品では一転してハーレイが警察側の人間として殺人鬼のジョーカーを捕まえようとします。

「じゃあ、バットマンは何してるの?」とも思いますが、その点も含めてストーリー展開が気になるところですね!

ちなみに、この作品の作者であるカミ・ガルシアは、この作品のジョーカー像について次のように述べています。

これまでに作成されたキャラクターの中で、ジョーカーほど恐ろしく、複雑な精神障害者はいません。私はジョーカーが実在の人物であるかのようにアプローチしたかったのです。彼は妄想に苦しんでいるのではなく、彼がそうしたいから殺す。知的で正気のサイコパスです。(中略)この作品では、ハーレイはジョーカーを追い詰める事が出来るスキルと知性を持つ唯一のキャラクターであり、同時に彼女自身も自分の内なる悪と対峙することになっていきます。

DC Ink panel news (私訳)
Nico
Nico

バットマン・・・出ないかもしれない(泣)

「Joker/Harley: Criminal Sanity」は、2019年10月2日に連載開始です。

なぜ今新たなハーレイ像が求められるのか?DCの作る新境地とは!

ハーレイ・クインと言えば、もともとはテレビシリーズ「バットマン」で独自に作成されたジョーカーの相棒であり、登場自体も長いDCの歴史上で見れば割と新しいキャラクターです。

生みの親であるポール・ディニとブルース・ティムによって描かれた「MAD LOVE」がオリジンとされており、アーカム・アサイラムで恋に落ちたハーリーンがジョーカーのためにハーレイ・クインとして生まれ変わります。


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マルチバースという世界観のもと、ハーレイ・クインとジョーカーの物語は多数作られてきましたが、これまではこの「原典」を大きく変える物語というのは存在しませんでした。

そんな「ジョーカーのオマケ」、「とにかくひたすらジョーカーに恋する女の子」という設定から飛び出し、彼女自身にフォーカスが当たる作品が作られ出したのは何故なのか?

それは、ハーレイ自身の人気が高まるにつれて、そのキャラクター性にも疑問の声が上がり出したからかもしれません。

現に映画「スーサイド・スクワッド」でマーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインは、これまでバットマンの世界に馴染みのなかった視聴者たちにも大好評を持って迎えられましたが、一部では「ありえない」という意見も見られます。

曰く、「恋愛依存症」、「バカっぽい」、etc.

ジョーカーを「プリンちゃん」と呼び、彼のためなら何でもしてしまうハーレイの姿は、もちろんそんな彼女を可愛いと思う人も多いですが、否定的な声も上がっています。

確かにジョーカーという最悪の犯罪者に加担し、何度暴力を振るわれ裏切られても最後には彼の元に戻ってしまう姿は、完全にDV被害者の心理か洗脳のようにも見えます。

特に原作版や過去のアニメシリーズを知っている人からすれば、ジョーカーのハーレイに対する態度は冷たい印象ですので、最近の読者なら余計に疑問に感じるでしょう。

一昔前なら一つのキャラクター性として容認されていた彼女の設定も、近年そういった風潮に厳しくなっている読者や視聴者からすれば、許容できる範囲を超えてきているのかもしれません。

おそらくDC側もそのあたりの事情は察知し、映画での二人の関係性はジョーカーからの矢印が強めに出されています。

「決してハーレイの一方的な感情なのではなく、ジョーカーも危険を押して彼女を助けに行くくらい二人はラブラブなんだよ」と、従来のファンから見ればあり得ないくらいに表現を緩和させました。

その証拠に正気を失ったのも拷問によるショックという設定に変えられ、収録段階では作成されていたというDVシーンもカットされており、小説版ではハーレイを失ったジョーカーの内面がかなりの量で描写されていました。

またコミックスでもハーレイ・クインが主人公のシリーズでは、そんなヤバい彼氏(ジョーカー)から自立しヒーロー路線を歩ませ、新しく恋人を作らせるなどとにかくジョーカーとの危険な関係性を薄めようとしています。

ですが、やはりというか何だかんだでストーリーの端々にジョーカーは登場してきますし、結局は読者もそれを期待して見てしまうところもあるのです。

つまり、ここに来てDCが新たにハーレイとジョーカーの出会いに違うスポットライトを当て始めたという事は、この辺りの事情を踏まえたうえで路線変更を図っているようにも取れます。

以前ならジョーカーだけを好き勝手に動かしていれば良かったのが、彼と深い関係性のあるハーレイ・クインの人気と知名度が高まるにつれ、現行のままでハーレイを扱うことに限界が見えてきたという事でしょう。

今後DCは「ハーレイとの関係を含めたジョーカー像」を、新たに模索する段階にきているのかもしれません。