「ヒーローズ・イン・クライシス」感想、DCヒーロー達の持つ心の傷

最近忙しくて前回より随分と更新が開いてしまいました。

ですが、どうしても今年中にこれだけは記事にしたいと思っていた作品があります。

それがこちら!

私の大好きなライター、トム・キング原作の限定シリーズ「ヒーローズ・イン・クライシス(原題:Heroes in Crisis)」です!

2018年9月から2019年5月まで全9回にわたり連載されたこのシリーズは、トム・キング作品にて度々言及されてきた施設「サンクチュアリ」を舞台にしたクロスオーバー作品です。

バットマンやスーパーマンは勿論のこと様々なヒーロー達が登場し、中でもある3人の人物に焦点が当てられ物語が進んで行きます。

この記事では、サンクチュアリで巻き起こった謎の大量殺人事件の裏で起きていた真相に迫る作品、「ヒーローズ・イン・クライシス」について解説します!

「ヒーローズ・イン・クライシス」あらすじ

ヒーロー達の心のケアを目的に設立された施設「サンクチュアリ」。

ある日ただ二人の生存者を残し、この施設に入院していた患者の殆どが殺害されるという事件が起こる。

事件解決のため、バットマン、スーパーマン、ワンダーウーマンは、生存者であるハーレイ・クインおよびブースター・ゴールドのどちらかが犯人であると考え容疑者を追跡する。

だが当の二人は、お互いがお互いを犯人だと思い込み殺し合いにまで発展してしまう。

一方スーパーマン(クラーク・ケント)の妻であり新聞記者であるロイス・レーンの元に、殺された患者の一人から、サンクチュアリに関する告白テープが届けられる。

世間にサンクチュアリの存在とそこで起こった事件が明るみになったことで、世間はヒーローに対する不信感を高めていく。

果たして事件当時、サンクチュアリで何が起こっていたのか?

真犯人はハーレイ・クインとブースター・ゴールドのどちらなのか。

それとも・・・。

「ヒーローズ・イン・クライシス」の舞台サンクチュアリとは

トム・キング版バットマンにて言及されているオリジナルの施設(舞台装置)です。

場所はアメリカの中央に位置しており、ヒーローの心のケアを目的にクリプトン星のテクノロジーを元にバットマンによって創られました。

見た目は田舎の一軒家(スーパーマンの実家に似ています)ですが、中は広い空間になっており患者には個室が用意されています。

AIにより個々の病状に基づいたパーソナルケアが施されており、患者はVRにより自分の好きな空間や人物を創造し体験する事が出来ます。

プライバシーを守るためか、施設内の共有スペースでは皆マスクとマントを着用しています。

事件当時少なくとも13人の患者(+勝手に遊びに来ていたハーレイ・クイン)が滞在しており、ホストロボットを含めた殆どが無残にも惨殺されてしまいます。

余談ですが、本作品タイトルの「クライシス」はDC作品における再編イベントとしての意味合いではなく、退役軍人のメンタルケアのために設立されたクライシスセンターに由来するそうです。

大量殺人事件の容疑者およびその関係者たち

本作には実に様々なヒーロー達が登場しますが、作品を楽しむうえで最低限知っておきたいキャラクターについて紹介します。

一応事件解決のためにサンクチュアリの責任者であるトリニティ(バットマン、スーパーマン、ワンダーウーマン)も動いているのですが、むしろ以下の人物の方が重要なのでそこに重点を置いて解説していきます。

あまり突っ込んだ内容まで書くとネタバレになってしまうため概要に止めますが、日本人に馴染みのないブースター・ゴールドとブルービートル、フラッシュ(3代目)については少し詳しく書いていきたいと思います。

ハーレイ・クイン(ハーリーン・フランシス・クインゼル)

映画「スーサイド・スクワッド」で一躍有名になったヒーローです。

バットマンの宿敵ジョーカーの元カノであり、元精神科医であり、元悪役(ヴィラン)という異色の経歴を持ち、本作品では容疑者の一人としてバットマン達に追われる身となります。

「サンクチュアリ」で治療を受けていた親友ポイズン・アイビーが殺害された事により、犯人である(と思っている)ブースター・ゴールドを殺そうとします。

Can I tell you a secret,GOLDIE? You Promise not to tell? I hate Pudding.

ねえゴールディ、私の秘密聞いてくれる?誰にも言わないでね?私、プリン大っ嫌いなの。

Heroes in Crisis (私訳)

ハーレイ・クインについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

バットガール(バーバラ・ゴードン)

バットマンの頼れる相棒です。

「キリング・ジョーク事件」により下半身不随となり一時期はバットガールを引退していましたが、近年リハビリにより復帰を果たしています。

かつてジョーカーから受けたトラウマを乗り越え、ハーレイ・クインの無実を信じ彼女と共に事件解決に尽力します。

I found you first so I could help you first. We can figure it out together.

私が最初に見つけたから、最初に貴方を助けられる。一緒に真相を解明するのよ。

Heroes in Crisis (私訳)

ブースター・ゴールド(マイケル・ジョン・カーター)

未来の技術と知識を使って戦う自己演出型のヒーローです。

1986年に初めて登場し、その後も長い歴史を経て「ちょっとふざけたヒーロー」枠で人気を保ってきました。

25世紀のゴッサムシティで貧しい家庭に生まれたマイケルは、20世紀の過去にタイムスリップしヒーローになる事を思いつきます。

目立ちたがり屋で、富と名声を得るためにヒーローになったブースター・ゴールドは、彼自身の性格と行動ゆえに作品内ではあまり周囲から尊敬されていません。

ですが、ヒーローとして行動するうちに自分自身が作り出したヒーロー像に後押しされる形で次第に自覚が芽生えていき、重要なイベントには必ず何かしらの形で貢献しています。

また時間旅行者として「時間がらみの事件」に関わる事も多く、いつの間にか当事者として事件解決に役立っていたり、実は歴史上の重要人物であったりと何気に存在感の大きいキャラクターです。

未来から連れてきたお助けロボット「スキーツ」との掛け合いも見所の一つです。

ちなみにゴッサム出身ですが本拠地はスーパーマンと同じメトロポリスとされており、ブルービートルとセットで描かれる事が多いです。

I ‘m BOOSTER GOLD! And I’m The greatest hero you’ve never heard of!

俺の名前はブースター・ゴールド!史上サイコーなヒーローさ!

Heroes in Crisis (私訳)

ブースター・ゴールドがサンクチュアリに来た経緯について詳しく知りたい方は、「バットマン:ウェディング 」をお読みください。

ブルービートル(テッド・コード)

2代目ブルービートルです。

バットマンと同じく特殊能力を持たないタイプのヒーローで、自身で開発したガジェットや格闘技を武器に戦います。

1966年にチャールトン・コミックスから出版された「キャプテン・アトム」のお助けキャラクターのような形でデビューし、その後人気を得て単独シリーズでデビューしました。

IQ192の天才で、一説によると「実はバットマンよりも賢い」と言われており、化学、物理学、工学、航空機、ソーラー技術の他、エイリアンの技術にまで精通しています。

またナイトウィングが「テッドはフィジカル的に熟達していて、ほとんど両手利きだ」と述べるなど、高い身体能力の持ち主でもあります。

そのくせどこか抜けているというかお人好しな部分があり、そこがマイナーながら根強い人気を持っている理由かもしれません。

かつては「バーズ・オブ・プレイ」に手を貸していた事もあり、その頃からオラクル(バットガール)に気があるように描かれていたためか、今回も丸々1ページを使ってバットガールとの会話が描かれています。

親友であるブースター・ゴールドから事件について相談を受けた事により、解決のために手を貸します。

But should we tell somebody? Like, THE JUSTICE LEAGUE maybe. BATMAN?

誰かに教えるべきなんじゃないかなあ。ジャスティスリーグとか多分、バットマンとかに?

Heroes in Crisis (私訳)

フラッシュ(ウォリー・ウェスト)

3代目フラッシュです。

かつてはキッドフラッシュとして2代目フラッシュ(バリー・アレン)のサイドキックを務めており、1959年に初登場した由緒正しい古参キャラクターです。

バリー・アレンの甥にあたり、彼と同じスピードフォースで超亜高速移動をする力を持っています。

ティーンタイタンズの一員でもあり、バリーが1985年の再編イベント「クライシス・オブ・インフィニティアース」で死亡し、2009年のリバースで復活するまではフラッシュと言えばこの人でした。

映画などに登場しないので日本人には馴染みが薄いですが、2013年にはDCヒーローズランキングで6位になったこともあるほど人気のあるキャラクターで、ドラマ版(アローバース)にもしっかり出演しています。

歴史改変により愛する家族を失い、自分以外の誰もその事実を覚えていない事に悩み苦しみ「サンクチュアリ」で治療を受けていましたが、虐殺事件により死体として発見されます。

ですが、その死体にはある秘密があり・・・。

Death. You’ll see my death.

死だ。君は僕の死を見ることになる。

Heroes in Crisis (私訳)

ポイズン・アイビー(パメラ・リリアン・アイズリー)

バットマンではお馴染みの悪役(ヴィラン)の一人であり、ハーレイ・クインの親友でもあります。

元植物学者であり、人体実験によって植物や微生物、フェロモンなどを自在に操る能力を持っています。

とある事情によりヒーロー専用の施設である「サンクチュアリ」で治療を受けていましたが、ある日突如何者かに殺害されてしまいます。

If SUPERMAN or BATMAN or WONDER WOMAN finds out. Do you know how much trouble you’ll be in?

もしスーパーマンやバットマン、ワンダーウーマンにこの事が知れたら・・・。あんたどうなるか分かってるの?

Heroes in Crisis (私訳)

ポイズン・アイビーがサンクチュアリに来た経緯について詳しく知りたい方は、「バットマン:ブライド・オア・バーグラー? 」をお読みください。

「ヒーローズ・イン・クライシス」のおすすめポイント

この作品のおすすめポイントとしてはストーリーの素晴らしさは勿論ですが、まずとにかく絵がひたすらカッコいいです!

アメコミならではの緻密で写実的な描き込みながら、決して暑苦しくない絵柄で、男性キャラはもとより、女性キャラもゴツイというよりむしろカッコいい。

ハーレイ・クインは勿論カッコ可愛いし、ポイズン・アイビーもセクシーでカッコいい!

(ワンダーウーマンはちょいゴツめかも・・・)

限定シリーズなのでアーティストがコロコロ変わらず、絵柄が安定しているので安心して読めるのも良いですね。

絵を描いているアーティストはクレイ・マンという方で、DC作品はおよびMARVEL作品で幅広く活躍されています。

ちなみに双子の兄弟であるセスはインカー(彩色担当)で、よく一緒に仕事をしているそうです(今回は違います)。

カラーリングもどぎつく無く、ストーリーに合わせてか少し抑え気味な色調でとても綺麗です。

あと、何度も言いますが悪と戦うヒーロー達の心のケアに注目するという設定が斬新でした。

悪と戦ううちに自らも心に傷を負っていくのはヒーローの宿命のようなところがありますが、それをきちんと治療しようと専用施設を作るところがアメリカらしい。

元CIAテロ対策センターで働いていたトム・キングならではの発想だと思います。

ですがハッキリ言って、登場人物が多すぎる!

有名どころからマイナーすぎるキャラまで多岐にわたるため、読んでいて「こんなヒーローいたんだ・・・」と何度も驚きました(笑)

様々なヒーローたちの置かれた状況やら心情やらを纏めて見せられるので、いきなりこれから入ると訳が分からず戸惑うかもしれませんが、ある意味DCヒーローの概要をまとめた図鑑みたいな楽しみ方もできるかもしれません。

「ヒーローズ・イン・クライシス」邦訳版が発売決定!

そんな「ヒーローズ・イン・クライシス」ですが、小学館集英社プロダクションより2020年1月23日に邦訳版が発売されます!

翻訳者はアメコミ翻訳ではお馴染み、高木亮さんです。

もしこの記事を読んで面白そうだなと思って頂けたら、是非「ヒーローズ・イン・クライシス」を読んでみてください。

そしてトム・キングにハマってください(笑)

ちなみにこの「ヒーローズ・イン・クライシス」ですが、続編として「Heroes in Crisis: The Price and Other Stories」が公開されています。

こちらはバットマン、グリーンアロー、フラッシュの本編で連載されていたストーリーのうち本作に関係のある部分を詰め合わせたものです。

舞台裏的な要素が強いのでこちらも併せて読んだ方がより理解は深まるかもしれませんが、なくても勿論大丈夫です。

またスピンオフ作品として、本作のハーレイ・クインとポイズン・アイビーの2人が主人公の「Harley Quinn and Poison Ivy」。

3代目フラッシュが主人公の「Flash Forward」がそれぞれ2019年9月より連載されています。

今後はこれらも是非、翻訳版を出版して欲しいですね!

それでは今回はこの辺で。

 

作者トム・キングおよび、彼が手掛けたリバース版バットマンについての詳しい情報はこちら。