「プレリュード・トゥ・ウエディング」舞台裏ハーレイVSジョーカー

トム・キング原作、DC REBIRTH版「バットマン」はもうお読みになりましたか?

とうとう邦訳版も「バットマン:ウェディング」まで発売され、バットマンとキャットウーマンの結婚イベントが完結しましたね。

この「バットマン:ウェディング」の見所と言えばやはり、いよいよ挙式を控えたバットマンたちの前に現れる、ブースターゴールドとジョーカーの事件だと思います。

そしてこの事件の前日譚を5回にわたり描いたのが、今回ご紹介する「バットマン:プレリュード・トゥ・ウエディング(原題:Batman: Preludes to the Wedding )」です。

以前このシリーズについてご紹介した記事「トム・キング版「バットマン」リバースコミックス内容まとめ」にも少し書きましたが、このプレリュードはその名の通り、バットマン&キャットウーマンの結婚式にまつわる周辺人物たちの物語です。

この記事では、「バットマン:プレリュード・トゥ・ウエディング」(未翻訳)で描かれた結婚式の舞台裏の中でも特に、ハーレイ・クインとジョーカーの攻防に焦点を当てて解説します。

また、このエピソードと関連の深い「バットマン:ウエディング」についても解説します。

完全にネタバレになっていますので、気になる方はご注意くださいね!

ジョーカーの下準備と巻き込まれる関係ないおじさん

この話「YOUR BIG DAY」は「バットマン:ウェディング」にも収録されており、本作品全話のプロローグにあたります。

バットマンが結婚式を挙げると聞き、ジョーカーは自分への招待状を心待ちにします。

なんで呼んで貰えると思ってるのか理解しづらいですが、そこはジョーカーなので理解しようとしてはいけません。

ジョーカーは結婚式の招待状を受け取るため、ある男の家を訪れます。

マルテッロ・ロジャーと名乗るその男性の家に入ったジョーカーは、彼にもうすぐこの家にバットマンからの招待状が届くと話します。

バットマンが結婚するんだってさ。という事は、彼はこの大事な日をきっと俺と分かち合いたいと思うはずなんだ。

Batman: Preludes to the Wedding (私訳)

もちろん、このマルテッロさんはバットマンどころかブルース・ウェインとも何の縁もゆかりもない人物です。

「どうして自分の家に招待状が?」

「しかも何故、今日もうすぐ届くはずだってわかるんです?」

当然疑問に思いジョーカーに尋ねますが、ジョーカーの答えは判然としません。

きっと自分は殺されるに違いない。

そう思ってジョーカーに確認しますが、当のジョーカーはこう答えます。

殺しゃしないさ。俺が人を殺すのは酷いショックを受けた時だけなんだ。

Batman: Preludes to the Wedding (私訳)

想像してみてください。

家の中で銃を持った凶悪犯罪者と二人っきり、いつ来るか、本当に来るかも分からない招待状をただ待ち続けるこの居心地の悪さ!

ジョーカーはマルテッロに対し紳士的に接していますが、マルテッロにしてみれば気が気ではありません。

自分の娘の事を話したりしながら必死に正気を保とうとしますが、次第に精神は疲弊し遂には自分から「殺してくれ・・・」と呟いたり、耐えきれずにブチ切れ大声を上げたりします。

それでも涼しい顔で、マルテッロを宥めるジョーカー。

この穏やかさが逆に不気味です。

時間が経ち、遂に二人が待ち望んでいた瞬間が訪れます。

郵便受けに入ってきた郵便物を一つ一つ確かめ、その中から白い四角い封筒を見つけ出したジョーカー。

果たしてそれはバットマンからの招待状だったのか?

恐る恐る訪ねるマルテッロに、ジョーカーはこう返します。

なんて幸せそうなカップルなんだろう!

俺は正式に招待されたんだ!

Batman: Preludes to the Wedding (私訳)

どうやら無事に招待状が届いたようで安心するマルテッロさん。

「届いた?本当に?じゃあ、ショックじゃないんですね(俺は殺されなくてすむんですね)?」

確認するマルテッロさん。

ショックだって?俺はこれから世紀の結婚式に参加するんだぞ?

新郎新婦、それに俺、みんながハッピーさ!

Batman: Preludes to the Wedding (私訳)

笑顔でマルテッロに語るジョーカーでしたが、そうやって油断させておきながら、彼の顔を拳銃で吹き飛ばします

その封筒は、マルテッロの娘が学校を遅刻したことに対する、ただの注意勧告の文書だったのでした。

Nico
Nico

理不尽が過ぎる・・・(泣)

ベストマンは誰?付添人は親友ポジの証

ところで皆さんはベストマンが何かご存じですか?

よく海外ドラマや映画なんかで、花嫁に付きそうカラフルなドレスの女性たちがいると思いますが、彼女たちの事をブライズメイドと言います。

反対に男性側にも付添人としてアッシャーという人たちがおり、この中のリーダー格をベストマンと言います。

要はブライズメイドもアッシャーも日本でいう友人代表な訳ですが、その中でも特にベストマンは式の進行なども任される重要な役割です。

友人代表は普通仲の良い友達に頼むものですし、その中でも司会進行やらスピーチなんかを務めるのは親友の役目ですよね?

つまりは、これを任されるという事は新郎にとってその人が自他ともに認める大親友という事になるわけです。

そしてここで抑えておきたいのは、ジョーカーが自分こそはバットマンの親友だと信じて疑っていないというところ。

勿論バットマンの方はそんな事思っていませんし、ベストマンはスーパーマンに頼むつもりです。

ナイトウィングも認めるように、ジャスティス・リーグ内で一番のヒーロー仲間ですしね。

(本編でも「悪役と結婚するとか正気か!?」と反対するスーパーマンの理解を得るために必死になったり、ロイスを交えてダブルデートして和解したりと一通り親友らしいことをしています)

ですがまあ、ジョーカーにとってはそんなの知ったこっちゃありません(笑)

街の大きな教会で執り行われていた結婚式に乱入したジョーカーは、参列者を一人一人殺していきます。

バットマンが駆け付けた頃にはその場にいた人間たちを皆殺しにし、人質にできる人間がいなくなると今度は自分を盾に脅し始めます。

ここで凄いのが、そうやって舞台装置を設定したうえで自分が昔殺した母親のエピソードを語りだし、彼女がカトリック教徒だったこと、彼女が信じていた教義のこと等々、一見真面目な話をしながらどんどん自分のペースに持っていくのです。

終いには「自分のために祈ってほしい」とバットマンに頼み、バットマンも思わずジョーカーの隣に並び手を合わせてしまいます。

流石にこれはちょっとバットマン流されすぎじゃないかと思いましたが、それだけジョーカーの話術が冴え渡っていたという事でしょう。

ここで一応バットマンに、「ベストマンは俺だよな?」と確認をとるジョーカー。

まんまとバットマンを陥れたジョーカーは、バットマンを爆弾で吹き飛ばし気絶させるのでした。

そしてここでとうとう、バットマンに言われて外から様子を伺っていたキャットウーマンが登場します

ジョーカーは言います。

昔を覚えてるか?

ペンギンと傘。リドラーとナゾナゾ。アイビーと植物。スケアクロウとガス。マッドハッターと帽子、トゥーフェイスと二重人格。フリーズと氷。

お前と猫。俺と笑顔。

どれも楽しかった。みんなが笑ってた。

でもなあ、奇妙なんだキャット。

お前もそこにいたのに、どうしてかお前だけが笑ってなかったんだよ。

Batman: Preludes to the Wedding (私訳)

まるで暗に、「お前は本当の意味ではこっち側(悪役)じゃなかった」と言っているようです。

その後、一対一で戦った二人は、お互いに致命傷を与えノックダウンしてしまいます。

倒れて動けなくなり、相手の止めを刺すこともできなくなったジョーカーとキャットウーマン。

やがて二人は、自分たち悪人について、お互いの考える人物評や人間関係について話し始めます。

誰と誰の仲が良くて、誰と誰の性格が近いのか?

一番バットマンを倒せそうだったのは誰か?

「そういえば結婚するんだって?おめでとう」

「ドレスの事はヤツとちゃんと話し合った方がいいぞ?絶対後悔するから」

そんな風にまるで昔馴染みの友人のように穏やかに話し合い、ジョークを言いあったりします。

話続けるうちに結局、自分たち悪人は皆バットマンの事が好きなのだという結論に達し、ジョーカーは一つの疑問を投げかけます。

「バットマンが結婚することで幸せを感じたら、それはもうバットマンではないのではないか?」

悪人の一人であるキャットウーマンにも、この疑問が突き刺さります。

悪いなセリーナ、お前の事が大好きだし愛してるよ。誓ってお前の幸せを邪魔する気はないんだが・・・。(中略)

バットマンが幸せになって、彼がバットマンじゃなくなったら・・・そんなの、つまんねえよ。

Batman: Preludes to the Wedding (私訳)

しばらく休んだことで立ち上がれるほど回復したジョーカーは、最後の気力を振り絞ってキャットウーマンに銃を向けますが・・・。

引き金を引く直前に昏倒し、気を失います。

入れ替わりに意識を取り戻したバットマンがキャットウーマンに話しかけますが、彼女はジョーカーを抱きかかえながら、ひたすら笑い声をあげ続けるのでした。

Nico
Nico

キャットウーマンが笑うのは、自分が勝利した時だけなのです。

ハーレイ・クインVSジョーカー「死が二人を分かつまで」

さて、いよいよここからが本題です。

話は遡り、ジョーカーを足止めしようとハーレイは先手を打って彼に罠をしかけます。

あのバットマンが結婚式をするとなれば、ジョーカーが黙って見ているはずがないと分かっているあたり、さすがは元カノですよね(笑)

しかも、キャットウーマンはハーレイと共にゴッサム・シティ・サイレンズを結成するなど、ポイズン・アイビーを含めて親友同士です。

バットマンと親友キャットウーマンが結ばれるという、この御伽噺のような一大イベントを守るためにも、邪魔者であるジョーカーの行動を何としても阻止しようとします。

「FOR BETTER OR FOR WORSE(良い時も悪い時も)」のラストでリドラーを締め上げ、ジョーカーの居場所を吐かせたハーレイは、まずジョーカーを車で跳ねて気絶させます。

「こんな時、ジョーカーはどんな行動を取るか?」

「ここでジョーカーなら、どんな事を言ってこっちを混乱させてくるか」

これまでの付き合いから学んだ情報を元に、常にジョーカーの先手を打ち続けるハーレイ。

まずは縛ったジョーカーを大きなタンクに入れ、「タピオカ入りプディン」(ジョーカーの大嫌いなお菓子)を注ぎ込み生き埋めにしようとします。

お前にしちゃ手ぬるいんじゃないか、ハーレイ?お菓子のトラップなんて、本質的に怖くもなんともない。爪も炎もチェーンソーもなにも無いしな。

素直になれよ、これだって俺の気を引きたいだけだろう?
お前はミスターJを殺せやしないさ。だってまだ俺を愛してるんだもんな。

Batman: Preludes to the Wedding (私訳)

めちゃくちゃ自身たっぷりですが、ハーレイも負けてはいません。

私のこと分かってるのねジョーカー。そうよね、あなたと私が一緒だった頃よりも以前から、私たちは親密だったもの。

懐かしのアーカムの診察で、私がハーリーン・クインゼル博士だった頃からね。

あなたは他のだれよりも長い時間、自分の一部を私に共有させてくれたわ。
あなたは私を特別な気持ちにさせてくれた。まるで自分が世界で一番幸せな女の子だって思えるくらいに。

Batman: Preludes to the Wedding (私訳)

そんなこんなで会話が続いていき、このまま溺死させるかと思いきや、なんとここでジョーカーが逃げるところまで計算済みです!

「あなたの事なら、まるで自分のことみたいに分かるのもっとも、これは愛じゃないけどね」

ジョーカーの動きを読み切り、途中ちょっとフェイントまでかける余裕を見せながら、彼を正面から打ち倒します。

再び昏倒からジョーカーが目覚めると、彼は鎖に繋がれ大きなクッションに座らされていました。

そこにまるでディズニー映画のプリンセスのような格好で登場したハーレイは、「このお話をハッピーエンドに持っていくためにも、あなたは死んでね♪」と言いながらジョーカーの前で踊ったり歌ったりして見せます。

こういう、自分の世界に相手を引きずり込んでペースを狂わせるのは、ジョーカー引いてはハーレイのお得意とする所でしょう。

一方ジョーカーはあれやこれやと言葉を並べてハーレイを説得しようとしますが、ハーレイもその手には乗りません。

とうとう助っ人として呼んだ元手下に、身動きできないジョーカーに止めを刺すよう命令しますが・・・。

まあ、大方の予想どおり、ここで逆転されます(笑)

ハーレイがジョーカーの手の内を読んでいたように、ジョーカーもハーレイの行動を見抜いていたのです。

ハーレイに犯罪のやり方を教えたのはジョーカーであり、言ってみれば彼らは師弟のような関係です。

まるで出来の悪い生徒に教える先生のように、失敗した原因を一つ一つハーレイに指摘するジョーカー。

ここは少年マンガとかでよくある、「師匠を超えるかに見えた弟子を逆に返り討ちにする師匠」みたいな感じでカッコ良かったです!

作中でジョーカーはハーレイを説得するため、「自分には思いつかないような犯罪を思いつくハーレイに内心嫉妬していた」と語っていますが、案外この辺は本心なのかもしれませんね。

結局最後は一対一の肉弾戦になり、手に入れた斧を使いハーレイの背後から頭をうち砕いたかと思いきや・・・。

ほら見ろ。

お前の頭を笑った口みたいにしてやるつもりが、最後の最後で斧を裏返しちまった。

Batman: Preludes to the Wedding (私訳)

ジョーカーはハーレイの頭をあえて斧の背の部分で殴り、昏倒させてこう言います。

ようするに俺は、本当はお前に死んで欲しくないんだよな。心の奥の何処かで、お前がきっといつか、俺だけがお前の幸せなんだと気づくって分かってるから。

いつの日かきっと俺の元に戻ってくる。

そして結局、一人でいても同じだと気づいて去るんだろうさ・・・。

Batman: Preludes to the Wedding (私訳)

ちなみにこのストーリーのタイトル「Till Death Do Us Part」の意味は、結婚式の常套句である「死がふたりを分かつまで」

う~ん、秀逸ですね・・・。

正直、台詞まわしの一つ一つがどれも素晴らしくジョカハレだったので、全部掲載したいくらいです(笑)

ですが、これは是非ともその目で読んで頂きたいですね。

アーテイストであるSAMI BASRIの描くハーレイが、もうとにかくめちゃくちゃ可愛いので!

Nico
Nico

SAMI BASRIさんは「ハーレイ・クイン」シリーズでも描いてらっしゃいます!

最後に:今後の邦訳版発売に期待を込めて

とりあえずは、’The Wedding’シリーズの邦訳が完結を見てくれて嬉しい限りです。

私としては「この調子で続きも頼むぞ小プロさん!」という感じですが、最近はシリーズ途中でも翻訳が止まってしまうことが多い気がするので、この辺りは売上次第という事かもしれません・・・。

特にこの「バットマン:プレリュード・トゥ・ウエディング」については、同じくサイドストーリーである「バットマン/フラッシュ:ザ・ボタン」が発売されたのだし、こちらも是非頑張ってほしいところです。

今のところ情報が入ってきていませんが、いつか発売された折には是非読んでみてください。

特にジョーカーとハーレイが好きな人には、絵も綺麗ですしおススメの本ですよ!

それでは、今回はこのへんで。

「バットマン:プレリュード・トゥ・ウエディング」に収録されている他のストーリーについては、別記事の「バットマン:プレリュード・トゥ・ウエディング悪役と5つの舞台裏」をご覧ください。

 

邦訳版の発売が待てないという方は、原書がハードカバーもしくはkindleで発売されてますので、英語の勉強がてらどうぞ。

当然ですが、本編も読んだ方がより楽しめるのでこちらも是非。