トム・キング原作、DC REBIRTH版「バットマン」はもうお読みになりましたか?
とうとう邦訳版も「バットマン:ウェディング」まで発売され、バットマンとキャットウーマンの結婚イベントが完結しましたね。
この「バットマン:ウェディング」の見所と言えばやはり、いよいよ挙式を控えたバットマンたちの前に現れる、ブースターゴールドとジョーカーの事件だと思います。
そしてこの事件の前日譚を5回にわたり描いたのが、今回ご紹介する「バットマン:プレリュード・トゥ・ウエディング(原題:Batman: Preludes to the Wedding )」です。
以前このシリーズについてご紹介した記事トム・キング版「バットマン」リバースコミックス内容まとめにも少し書きましたが、このプレリュードはその名の通り、バットマン&キャットウーマンの結婚式にまつわる周辺人物たちの物語です。
この記事では、「バットマン:プレリュード・トゥ・ウエディング」(未翻訳)で描かれた、結婚式の舞台裏について解説します。
なかでも、特にハーレイ・クインとジョーカーの攻防については、別記事「プレリュード・トゥ・ウエディング舞台裏ハーレイVSジョーカー」にて詳しく書いていますので、そちらをご覧ください。
完全にネタバレになっていますので、気になる方はご注意くださいね!
それぞれの思いを胸に繰り広げられる5つの戦い
まずは、この本に収録されているタイトルの簡単な紹介から始めたいと思います。
本作にはそれぞれ独立したストーリーが5本収録されており、原作者は同じですがアーティストはそれぞれ別人です。
またこの5本の他にも、プロローグとエピローグにあたる短編2本が収録されています。

それでは早速見ていきましょう!
「YOUR BIG DAY」
この本のプロローグにあたるストーリーです。
詳しくは別記事「プレリュード・トゥ・ウエディング舞台裏ハーレイVSジョーカー」で説明していますが、ジョーカーの狂気がにじみ出ています(怖)
ちなみにの作品だけは、本編の「バットマン:ウェディング」からの抜粋であるため、原作をトム・キングが書いています。
また、アーティストは「ヒーローズ・イン・クライシス」でトム・キングとタッグを組んだクレイ・マンです。
「FROM THIS DAY FORWARD(今日この日から)」
4代目ロビンでありバットマンことブルース・ウェインの実子であるダミアン・ウェインと、彼の外祖父でありバットマンの宿敵であるラーズ・アル・グールの対決です。
「For Richer or for Poorer(富める時も貧しい時も)」
初代ロビンであり現在はナイトウィングとして活躍するディック・グレイソンと、バットマンの正体であるブルース・ウェインと浅からぬ因縁を持つ悪役ハッシュの対決です。
「FOR BETTER OR FOR WORSE(良い時も悪い時も)」
バットマンの頼れる相棒バットガール(バーバラ・ゴードン)と、長らくゴッサムシティで暗躍してきた悪役の一人リドラーの対決です。
「IN Sickness AND IN Health(健やかなる時も病める時も)」
2代目ロビンであり現在はレッドフードとして活躍するジェイソン・トッドと、アナーキーによる対決です。
「Till Death Do Us Part (死が二人を分かつまで)」
詳しくは、別記事「プレリュード・トゥ・ウエディング舞台裏ハーレイVSジョーカー」をご覧ください。
エピローグ
ハーレイの手を掻い潜ったジョーカー。
彼の向かった先は・・・。
見て分かるように、タイトルが結婚式の宣誓の言葉になっていますね。
事項からは、それぞれのストーリーの内容について詳しく解説します!
「FROM THIS DAY FORWARD」
ダミアン・ウェインは、4代目ロビンであると同時に、正史で唯一バットマンと血の繋がりが明言されている子供です。
彼の母親はバットマンの宿敵ラーズ・アル・グールの娘タリアであり、ダミアンもバットマンと会うまでは、祖父の組織する世界的暗殺者集団の中で育てられてきました。
自信の暗殺者としての腕に絶対の自信を持つ一方で、バットマンに引き取られてからは徐々に周りとも打ち解け、ヴィジランテとしての自覚も芽生えてきています。
また、バットファミリーの一員としてだけでなく、ティーンタイタンズにも所属し日夜悪と戦うなど、いまやDCリーズには無くてはならない存在です。
一方、ダミアンの祖父であるラーズ・アル・グールは、バットマンの初期作品から登場する宿敵であり、地球環境改善のために世界人口を大幅に減らすことを目論む世界的なテロリストです。
バットマンの宿敵としてはかなりの大御所で、クリストファー・ノーラン監督の映画ダークナイト三部作にも登場しています。
エピソード上幾度も死んだと思われる度にラズラス・ピットと呼ばれる神秘の泉により復活する不死身性を持っており、またバットマンについては宿敵としてその実力を認めるだけでなく、自身の後継者に就くことを望んでいます。
本作では結婚式の前夜、街のゲームセンターにこっそり侵入したダミアンの前に、祖父ラーズが現れこう告げます。
バットマンとキャットウーマンが結婚し、もし子供が生まれればお前はお払い箱になるだろう!お前の母がそうだったように、お前の立場もその子と入れ替えられるのだ!
Batman: Preludes to the Wedding (私訳)
—-バットファミリーの中に自分の居場所が無くなってしまうかもしれない・・・。
—-自分は一人になってしまうのでは?
父親の結婚に不安を覚えるダミアンと、そんな彼と上手くやっていきたいと話す継母セリーナとの心が繋がるストーリーです。
「For Richer or for Poorer」
ディック・グレイソンは初代ロビンであり、バットファミリーの中では長男的な立ち位置にいます。
現在はナイトウィングという独立したヒーローとして活躍していますが、バットファミリーで最初にバットマンのサイドキックを務めたことから、現在でもバットマンにとって最も信頼できる仲間の1人です。
一方、ハッシュとは近年新しく加わった悪役の一人なのですが、その出自と行動からファンに多大なインパクトを残しました。
彼の本名はトーマス・エリオットと言い、ウェイン家と並ぶゴッサムの旧名家の出身です。
バットマンの正体であるブルース・ウェインとは幼馴染にあたりますが、彼自身はブルースを友人というより、むしろ事あるごとに自身と比べ憎悪の対象として見てきました。
それがどんな些細なことであれ、自身が手に入れられるはずだったものを他人に盗られるのが我慢ならない性格なのです。
このハッシュが厄介なのは、他の悪役達と違いバットマンの正体がブルースである事を知っているところです。
彼の表題作「HUSH」ではバットマンの正体を分かった上で、憎きブルースを苦しめるために、バットファミリーおよびバットマンの愛するキャットウーマンを痛めつけようとします。
本作では、バットマン、スーパーマン、ナイトウィングの3人がバチェラーパーティを楽しむため、ライトニングドアで別次元に移動し、正体がバレる心配なくゆっくり過ごそうとしていた所にハッシュが現れます。
別次元のゴッサムシティへと飛ばされたナイトウィングとハッシュは、不気味な敵たちに囲まれ共闘する事になります。
負傷したハッシュを連れてウェイン邸へと非難したナイトウィングは、何故ハッシュがブルースの親友足りえなかったかを説きます。
一方かつてはブルースの幼馴染であったハッシュは、自分の行動を棚に上げ現在親友としてブルースの傍にいるディックを憎みます。
俺が間違っていた。俺はずっと自分がブルースになりたいんだと思っていたが、本当は彼の親友に戻りたかっただけなんだ。
そう、俺はグレイソン。お前になりたかったんだよ・・・。
Batman: Preludes to the Wedding (私訳)
その事に気づき、ハッシュが取った行動とは?
バットマンはベストマンの役目をスーパーマンに頼みましたが、親友は一人と決まっている訳ではありません。
この事件の後、ナイトウィングとバットマンは改めて親友として、家族としてこれからも変わらぬ関係を続けていこうと笑いあいます。
「FOR BETTER OR FOR WORSE」
バットガールはこれまでに何人か登場してきましたが、その中でも代表的なのがバーバラ・ゴードンです。
ゴッサム市警察のジェイムズ・ゴードンの娘である彼女は、目覚ましい活躍をする一方でジョーカーの襲撃により下半身不随になるなど過酷な人生を送ってきました。
また、近年リハビリによりバットガールとして復活するまでは、バーズ・オブ・プレイの頭脳「オラクル」として活躍するなど、戦闘面だけでなく頭脳面でも非常に優れたクライムファイターです。
一方リドラー(本名:エドワード・ニグマ)は、非常に高いIQを持ち、パズルやナゾナゾを使った犯罪を得意とします。
バットマンにとっては長年の宿敵の一人であり、わざと手掛かりとしてナゾナゾを残すなど、ジョーカーと同じく犯罪を楽しむタイプの悪役です。
この作品の本編にあたる「バットマン:ウォー・オブ・ジョーク&リドル」では、ゴッサムの悪役として双璧をなすジョーカーを相手に、ゴッサムシティを二分する大戦争を巻き起こします。
本作でバットガールはリドラーからの挑戦を受け、誘拐された4人の人質を救うため、リドラーが手掛かりを録音したテープに従い謎を解いていきます。
次々と謎かけをするリドラーは、人質の居場所のヒントに交え結婚にまつわる謎について語ります。
バットマンとキャットウーマンが結婚すると聞き、自分の人生について考えさせられたこと。
ソウルメイトと言えるような相手を渇望しつつも、自分には興味を持てるような女性がこれまでの人生にいなかったこと。
自分は自分と同じくらい賢い女性にしか興味がないこと。
君が俺の予想通り、この挑戦を乗り越えられるほどの知恵と賢さを備えた女性なら。
俺は君のことを愛せるかもな。
Batman: Preludes to the Wedding (私訳)
事件が解決し疲れ果てたバットガールは少し考えこみ、ナイトウィングに電話をかけコーヒーに誘います。
「IN Sickness AND IN Health」
レッドフードの正体は、かつての2代目ロビンであるジェイソン・トッドです。
1988年に発表された「バットマン:デス・イン・ザ・ファミリー」にてジョーカーに殺害されたかに見えましたが、その後前述のラズラス・ピットにより復活し、レッドフードというアンチヒーローとして再登場します。
このラズラス・ピットには驚異的な回復をもたらすと同時に精神を破壊する作用があるため、ジェイソンは性格が歪んでしまい、ジョーカーへの憎悪とバットマンへの反抗心もあって、ファミリーと距離を置き独自の道を歩むことになります。
また皮肉なことに彼が赤いマスクを被っているのも、「赤いヘルメットを被った小悪党が化学薬品工場でバットマンに追い詰められた末、薬品タンクに落ち発狂し狂人として生まれ変わった」という、ジョーカー誕生の設定へのアイロニー(皮肉)となっています。
一方アナーキーとは、1989年に初登場した悪役です。
マイナーながらもドラマ(アローバース)やゲームにもちょこちょこ出演しており、知る人ぞ知る悪役といった感じですね。
初登場時はまだ子供と言っても良い年齢で、若さゆえに世の中の不平等や社会的悪への反発心から行動がエスカレートしていきます。
彼自身は自分を正義の使者だと考えていますが、彼の行動原理は反体制的であり、無政府状態が人々に真の平和をもたらすと信じて疑いません。
まさしく「アナーキー(無政府主義)」です。
ですが、高い戦闘能力と頭脳に加え、哲学的、政治的な信条を持って行動する事から、彼をアンチヒーローの一人として見る向きもあります。
常に赤いマントと金色のマスクを被っており、同じくアンチヒーローであるレッドフードとの共通点も多いことから、そこがこの対決の見所となっています。
本作では、バットマンの依頼でセリーナの警護をしていたレッドフードが、彼女と友人たちのいるパーティー会場を襲撃しようとする集団を発見し、その背後にアナーキーがいることを突き止めます。
アナーキーのターゲットがセリーナ達だと気づいたレッドフードは、彼の犯行を止めに走ります。
アナーキーを倒したレッドフードは、彼自身の口から今回アナーキーが動いた真の理由を聞きだします。
手紙が来たんだ。バットマンとキャットウーマンに、結婚式でどんな事が起こるか事前に教えてやれって。
もう何年も手紙を送り続けてきたけど、返事が来たのはこれが初めてだった・・・。
Batman: Preludes to the Wedding (私訳)
アナーキーが手紙を受け取った人物とは、他ならぬジョーカーです。
実は過去作品では、アナーキーがジョーカーの息子だとするものがあり、彼は初めて自分に返信をくれた父親の指示に従い今回の事件を起こしたのでした。
最後に:今後の邦訳版発売に期待を込めて
本作はそれぞれが別々のストーリーの形を取りつつも、背後では共通の筋書きが通っており、最後は「バットマン:ウエディング」に繋がる仕組みになっています。
ただし、時系列がバラバラなうえに絵柄が毎回変わるので、ちょっと読みにくい感じもしますが・・・。
まあそこは短編集という事で、むしろアメコミの醍醐味ですね(笑)
とりあえずは、’The Wedding’シリーズの邦訳が完結を見てくれて嬉しい限りです。
私としては「この調子で続きも頼むぞ小プロさん!」という感じですが、最近はシリーズ途中でも翻訳が止まってしまうことが多い気がするので、この辺りは売上次第という事かもしれません・・・。
特にこの「バットマン:プレリュード・トゥ・ウエディング」については、同じくサイドストーリーである「バットマン/フラッシュ:ザ・ボタン」が発売されたのだし、こちらも是非頑張ってほしいところです。
今のところ情報が入ってきていませんが、いつか発売された折には是非読んでみてください。
特にジョーカーとハーレイが好きな人には、絵も綺麗ですしおススメの作品ですよ!
それでは、今回はこのへんで。
ジョーカーとハーレイのストーリーの詳しい解説は、別記事の「プレリュード・トゥ・ウエディング舞台裏ハーレイVSジョーカー」をご覧ください。
邦訳版の発売が待てないという方は、原書がハードカバーもしくはkindleで発売されてますので、英語の勉強がてらどうぞ。
当然ですが、本編も読んだ方がより楽しめるのでこちらも是非。